FreeDSP OCTAVIA




Version 0.1 ADAU1452/1466 DSP BOARD WITH RASPBERRY-Pi Model 3B+


Introduction

過去にFreeDSPのプロジェクトでは結構な種類のADAU1701のボードを開発してきた が、これはSRCが無い石だったので基本的にアナログ入出力で使うべき石だという認識でS/PDIFなどのFsが可変デジタル入力は付けない方針でやってき た。その集大成としてFreeDSP Catamaran A/Bプロジェクトでチップ搭載のコーデックの性能の限界まで引き出せたと感じたのと同時にアナログ接続での限界も思い知ることになった。 そこで、次なるステップとして ソース機器とのデジタル接続なしには超えられない限界をADAU1701にDIR/DITとSRCを付加することでクリアすることでも可能であれど、コス ト的にみると、例えばTIのSRC4392を追加してS/PDIFの入出力インターフェースを追加したとしても、個人レベルでは20ドル近いコストアップは避 けられない。さらにチップの制御のためにマイコンも必要なので最低でも20ドルは下らない。 おまけに1701DSPコアの処理能力の限界も見えてきていた。  オンチップコーデックという利点はあれど、そこまでADAU1701に執着する必要性に疑問を感じた。 その一方でAnalog DevicesのSigmaDSPのラインナップにはDIR/DIT/SRCを搭載したADAU1542や、パフォーマンスアップ版のADAU1466があり ADAU1452ならJLPCBで僅か8ドル強で買えるのでADAU1701と比べてもたった4ドル程度しか違わない。これならADCとDACを追加したと しても十分リーズナブルだし、同時期にADAU1701を搭載したボードのユーザーからUSB入力にも対応したボードが欲しいというリクエストがあったり、 3wayスピーカーシステムへの対応などで6ch以上必要になることを考えると全く同じDAC回路を8チャンネルぶん搭載したボードがマッチすることは間違い ないということで、一段ステップ アップしてAUAU1452/1466を採用したボードを開発してみようという気になったのであった。 ちなみにOCTAVIAという名前はラテン語で8っの ことをオクト(OCTO)と呼ぶことから連想して付けたたものである。約半年間に及んだ開発期間の顛末に興味ある方はDIY Audio ForumにあるDigital Line Source掲示板を読み返して貰うと途中で起こった事や何度もの方針転換などの経緯が分かってコミュニティで開発活動をする面白さの一端が垣間見えるかもしれない。



Design Concept

ADAU1452/1466の機能をフルに活用して接続を考えた場合にS/PDIFとI2S接続に なるが、実用上の制約として未だアナログ入力は外せないだろうということと、昨今のネットワーク対応までを考えると十分なパフォーマンスの音源としては ESP32よりもRaspnerry-Piが有力な候補に上がった、Raspnerry-PiとDSPはUSBで接続する事も可能ではあるが、今日パソコンは保護されたコ ンテンツ 再生音源のひとつであるため欠かせないものだと考えると両方使いたい、そういう訳でRaspberry-Piは40ピンのIDCスロットでI2S 接続し、さらに電源もDSP ボード側から供給することで、あたかもDSPボードの一部かのように使うことができるようにしたいと思った。 Raspberry-Piを搭載するからには単 にオーディオの音源デバイスだけではなくTCPi (ネットワーク接続版のUSBi)としても使うことができるようにしたいし、リアルタイムでDSP内部レジスターやメモリにアクセスすることで細かい制御もやってみたい一 方 でRaspberry-Pi無しでも動かせるDSPボードにしたいという気持ちもあって、両者の要望に折り合いをつけるのに少々時間が必要であった・・・

暫く悩んだのち、ADAU1452/1466はTIのリファレンス・デザインではSPI接続の EEPROMからブートする仕様になっていたが、ADAU1701と異なる点としてADAU1452/1466の書き込みは一度DSP内部にロードしたイメー ジをDSP経由で書き込むというスタイルであり、外部からDSPに書き込む方法はSPIとI2Cが選べるという事が分かった。実際にI2C接続でやってみて書 き込みの所要時間的にもほぼSPIと遜色ない事が判明したので、USBiでもRaspnerry-Piからでも任意に書けて、両者がバッテイングしない回路を 作りやすい I2C接続を採用することにした。 もう一つの理由としてラズパイからのノイズがSPIよりもI2Cの方が疎結合なので伝 わりにくいという要因もあった。 途 中にピンヘッダーを追加することで有機ELディスプレーモジュール等を接続することを可能にした。 最終的にラズパイからのI2Cライ ンにはバススイッチを挿 入しUSBi接続時にはラズパイを切り離すことで両者間の干渉を避ける設計にしている。

ADAU1452/1466は4系統のI2S入力とS/PDIF入力が可能 であるが、I2S入力を ラズパイ、USB、ADCで使用し、残り1系統は将来的に高品位ADCボードやLVDS方式のI2S 入力ボードを拡張する用途を想定しオプションとしてI2S入力ヘッダーを搭 載することにした。 問題はこれらのソースとさらにS/PDIFの光と同軸を如何なる方法で選択するのか?という課題であった。 I2S 入出力をフルに使用 するとDSPのGPIOとして使えるMPポートは2ビットしかなく、これでは4種類しか選べないし、それ以上の拡張は不可能なためにいずれ使えなくなる、そこで6系統も あるオンチップのAUX-ADCのひとつをソースセレクターとして使うアイディアを思いついた、これなら分割するスレッショルド値を増やすことも容易だし貴重 なMPポートも消費しない。 AUX-ADCでソースセレクトすることで使わなくなったMPポートはレベル監視のLEDを点灯させる用途などに使う事にした。

次にデジタルオーディオ入力であるが、S/PDIF入力の光と同軸を切り替えるとなるとSPDTセ レクター スイッチが必要になる、しかし実際のところ両方を切り替えながら使う機会は余り多くない、そこで自動で両者を切り替える回路を考えた。 実現手法としてS/PDIF の信号はバ イフェーズマーク方式と呼ばれる変調がされているので、HかLには関係なく単に位相が反転するまでのタイミングだけが重要であることを逆手にとって光と同軸の信号の EXORをとることで、どちから片方だけ変化していれば自動的に所望の音声が再生できるというロジックに基づき回路を考案した。 プロトタイピングしてみて 判ったのだが同軸のレシーバーアンプが周囲ノイズに非常に敏感で同軸未接続状態でも頻繁に反転するため光入力使用時に受信信号を妨害することが起きやすかった ので、Ver0.3からは意図的に不感帯を設けて未接続時に周囲のノイズを受けにくくする回路変更をしている。

 USBオーディオ入力は永年の実績のあるAmanero社製のCombo384基板を採用するこ とで開 発の手間を省き信頼性のある動作を可能にした。 同ボード互換で使えるボードも多種出回っており選択によってはコストも削減可能である。実際にXMOSやBRAVOの チップを採用した互換製品でも問題なく使用することができた。

DSPで処理された信号はDIT(オンチップのS/PDIFトランスミッタ)で送信することもでき るが1系統しか搭載していないし、一番 多いと思われるチャンネルデバイダー用途であれば次に繋がる機器はパワーアンプというケースが圧倒的に多いはずだと考え、マルチウェイのオーディオシステムを手軽 に組めるようにしたいというコンセプトであるなら、RCAピンケーブルで接続するカジュアルなパワーアンプを利用する場合が多いと思う、しかし殆の機器がクラ ス2(電源コンセ ントに接地用の端子を持たない)仕様である日本とは違い、欧州など海外では保安用の接地がグランドループを構成してしまうケースがかなり多くなる、そこでハムノイズ等が 乗ってしまわないようにXLRコネクターを使うバラン ス接続で解決するのも良いのだが、庶民的には普及クラスの安価なRCAピン接続のパワーアンプを3〜4台買って気軽にマルチアンプ駆動にチャレンジしたいものだと思 う、そ こでFreeDSP Catamaranでも採用したRCAのピンジャックを使用しながらもディファレンシャル出力を行うことで、本基板とパワーアンプの間に微小な電位差があったとしても、そ の電位差をキャンセルしてパワーアンプが信号だけを受け取れる回路を開発した。この回路があることによって機器間のポテンシャル電位差に起因するハム音の発生 と定 位の揺れ が抑制可能となる。 この回路はFreeDSP CatamarannのディファレンシャルADC入力部ではじめて採用したOPA1632を今回は出力のドライバー回路に使って電子式のトランスレスバランス出力回路を構 築しver0.1基板に搭載した。しかし細かく検証してみた ところ、アンバラ差動接続にするためにコールド側出力を接地してしまうとコールド側出力の負荷が重いためにどうしても大振幅時に歪率が悪化してしまって0.01% を切る のが難かった。 ここで全て諦めて普通のアンバランス出力に妥協してしまうのも悔しかったので、さんざん悩み考え抜いた末にトランス互換動作の完全な電子バランス出力では ないがXLR出力と RCAのピンを同時に使わなけばディファレンシャルRCA出力とXLRバランス出力が共用できる回路をに考案することができた。この回路は DVR103とは比べ物にならない程に少ない歪で非常に高い周波数域までフラットで正しい位相差を保って出力することができる。

これらのADC/DAC/DSPを動かす電源は外部機器との2V RMS入出力に必要十分なダイナックレンジを確保しつつ、アンチポップ ミュート回路の実装が必須であることなどを総合的に考慮し片電源では難しいので-5Vの電源を追加した正負のバイポーラ電源を採用した。DACから出力までをDC接続とし たことでオー ディ オ信号系にあるカップリングコンデンサーを撤廃しDACからアナログ出力までの音質の向上にも貢献している。 今では決してワンボードマイコン基板とは言い難い程のパ フォーマンスを有するようになった Raspberry-Piは、いわばノイズの塊でありオーディオ機器からなるべく離れた環境に置きたいものであり、用がない時には止めてしまいたいものである。 同 時にこれは設計上極めて難しい要求事項でもある。そ こで当基板ではラズパイ用のDC+5V電源を専用の独立した電源回路にした上で、電源と連動するが独立した別のスイッチを持たせている、基板のプリントパターンも5V電源 電流の供給経路とリターン経路が他の 回路になるべく影響を 及ぼさないように注意深く基板設計を行っている。 Linuxコンピューターであるラズパイを自動できちんとシャットダウンする時間を確保するために遅延オフ回路、電源断 の検出回路や再起動ボタン等も装備している。 赤外線リモコン受信モジュールやI2Cヘッダーなどいろいろ付けたついでにラズパイの初期設定等でシリアルコン ソールとして利用できるUART通信ヘッダーも装備した。 ver0.2ま では2層基板で低いコスト で十分実用になる性能を得ていたが、ver0.3からは基板一枚あたり4ドル程度のコストアップにはなるが、より高いオーディオパフォーマンスを求めて4層 基板を採用することにした。

Features:

ざっと書いただけでもこれだけフィチャーが満載のDSPボードであり、むしろ現代版のプリアン プ と呼んだほうが適切なのかもしれない。



Block Diagram

以下にFreeDSP OCTAVIAの回路ブロック図を示します。

基本動作の全てをADAU1452/1466に搭載されている機能とハードウェア回路だけで実 現しているので、マイコンを使用することもなくシンプルな構成となっています。 その結果として当然ながらRaspberry-Piが無くても全く問題なく使 用することができる構成になっています。


Circuit Design

ver0.1

最初に5枚だけ試作したバージョンで2層基板で設計。当初予定していた12V電源で動作させるとア ナログ電源ICの発熱量が多すぎてAMS1117が壊れてしまう程であったので、一部定数を変更して6.5Vから動作する仕様に変更。 マイナーな修正はいく つか必要であったが、必要 な 動作は一応すべて動くことが確認できた。

ver0.2

ドイツのLudwig氏が試作してみるとの事で、急遽ver0.1で見つかった基板の問題点を修 正したバージョン。この版で電子式のバランス出力回路をアンバラ差動出力回路として使った場合の大振幅歪特性に限界を感じたのと、チャンネルごとのオーディオ 特性が基 板パターン の引き方で微妙に違ってくる事など、かなりディープな細かい部分での性能向上を求めて各種特性を測定し改良方法を検討したバージョンであり、この検討作業を通し て2層基板での性能限界が見えてきたので次版から4層基板で再設計する方針に変更した。

ver0.3

XLR出力と差動RCAピン出力用途に最適化したOPA1632出力回路を使用した回路を搭載した バージョン、その他ではアナログ正負電源の立ち上がりタイミングを近づける、USBオーディオ入力時のミュート動作をより厳密にする、メインSWオフ時に USBインタフェースから漏れてくる電圧でアナログ電源がオンしないようにする等の細かい改良も行った。このバージョンからディファレンシャルRCAピン出力 のグランドリフト抵抗値を20Ωに下げている。

ver0.33

誤って9Vよりも高い電圧で動作させた際に、暫くのあいだは正常に動作するが発熱量が過剰になるの で数日後には熱でアナログ電源のICが壊れて過電圧が回路に掛かってしまう現象を目撃したので、精神的にも熱的にももっと余裕をもたせようとAMS1117よ り熱抵抗が約半分でパッケージも放熱マージンが大きいLM317に設計変更したバージョン。 大きめのヒートシンクを貼ったり7.5Vの電源アダプターを使う 限りはまず必要ない変更ではあるが特に余裕があっても何も悪影響は無いので実施しました。 それとDSPのサンプリング周波数の最大値が192kHzなので PCM5102A出力のCRフィルターの定数の見直しを行いました。 当バージョンのデザインで2回めの基板試作検証を行う予定です。 


Power Supply

 基本的に回路基板上のスイッチで直接に電源を完全切断することはせずにスタンバイ状態にすること で目的を達しています。電源回路はデジタル系の+3.3V電源、Ver0.2まではAMS1117互換品を使用したアナログ系 の+3.3Vと+5V電源、LM2611を採用した-5V電源に加えRaspberry-Pi専用の容量3Aの+5V電源回路を搭載している。DCジャック至 近にはコモンモードチョークコイルを配し電灯線へノイズ伝搬することを抑制しています。 Q7は万一の逆接続時に回路を切り離す保護回路です。電源のオン/オ フ アンチポップミュートドライバー回路は、主電源スイッチSW2によって制御されます。 「MUTE」ラインでソリッドステート型のオーディオ出力ミューティング回路を駆動します。 SW3 は Raspberry-Pi 専用の電源スイッチです。 U6のLMC555は、ラズパイ専用電源回路のパワーオン遅延とシャットダウン遅延のタイミングを生成しU5で構成されている Raspberry-Pi +5V SMPS ブロックの動作を制御しています。

 USB機器がアクテイブのときにCombo384出力から 3.3V系の電源レールに漏れてくる電圧でアナログ5V/3.3V電源が常時オンになってしまっていたのでver0.3からはR54を追加してSW2操作連動で落ちるよう にしています、スタンバイ時の全消費電流は約8mAほどです。

Ver0.33からはアナログ電源のIC (U3とU7)をLM317に変えています。


発熱量を低く抑えるためには電源電圧は低いほうが望ましいので、ア マゾンで見つけた7.5VのDCアダプターを愛用しています。(下画像)ラズパイ3B+動作時でピーク約1A強の電流が流れます。


Power Status LED Indicator

Raspberry-Piの電源状態とオーディオミューティング機能を示します。


RGB LEDの色による順方向電圧の違いを巧みに利用することで発色の切り替え回路を省略しています。


Raspberry-Pi 40P Slot

シリアル コンソール用のデバッグ ヘッダー J4 が用意されています、TDI製のUSB-UART ケーブルである TTL-232R-3V3が使用できます。

シャットダウンと再起動兼用のボタン SW1 の押下状態をGPIO17 または GPIO26で検出することができます、電源SW3のオンオフやSW1ボタンの操作で自動的にシャットダウンする動作を実装するためには、このポートがLow状態になった 場合にRaspberry-Piをシャットダウンする ソフトウェアシーケンスを実装する必要があります。 SW1はラズパイの電源を落とさない状態でのシャットダウンからの再起動にも対応しています。

USB-I2S Interface Slot

この20ピンスロットにAmanero製のCombo384ボードを装着することでUSBオーディ オデバイスとしてPCからのオーディオ信号をI2Sで入力することができるようになります。DSPチップ仕様の制約からFsの上限は 192kHzまで、DSDモードには対応しません。

USB 選択時に Combo384 出力が MUTE になると、PCM5102A の XSMT (ソフト ミュート) が起動します。 このミュート機能は電源オン時および電源オフ時およびDSDストリーム再生時の保護でも有効になります。Combo384ボードには互換品が多数で回っていますので、好み のボードを装着してください。 

DSP Reset

DSP-ResetボタンSW7が設けられています。
DSPリセット動作は、同時にDACの ソフトミュート (XSMT) にも反映されます。

DSP BOOT-EEPROM and USBi Interface

ボード上のDSPにUSBi および Raspberry-Pi からI2C アドレス(0x70) からアクセスできます。
SigmaStudioのデフォルト選択状態ではSPI接続が選ばれますので自分でI2C 接続とアドレスを選択する必要があります。
Q30とQ31はUSBi接続時にラズパイを切り離すためのバススイッチです。これにより両者 の競合を防止しています。
J6のDIPソケットはEEPROMチップが入手難だったためICのパッケージの選択肢を増や すために付けたものなので基本的に不要ですが、R45を外してSW4を実装することでSOICとDIPのチップ間でA/Bの切り替えが可能になります。

S/PDIF Interface

光と同軸の入力で接続した方をスイッチなしで自動選択する回路になっています。
U11の出力電圧が中途半端な値になるのでver0.32からはAC結合にしてクランプ回路を 追加しました。入力された各 Bi-phase-mark 信号は U10でXOR 処理されるため、光と同軸を同時に使用することはできません。 S/PDIF入力は何れか 1 つだけを使用してください

Master Clock

48kHz系の512fs TCXOを搭載しています、 なので外部 96kHz サンプリング ADC ボードを容易に設計できます。

DSPのマスタークロック出力にはファンアウト能力には制限があり、当デザインでは多数のデバ イスが接続されるのでLVC04によるバッファーを付加しています。

24bit ADC Analog Input

デジタル・オーディオが主流になった今日とはいえ、まだまだアナログ入力を無くすことはできないの で、A/Dコンバーターを搭載しています。

PCM1808 ADC がFM チューナーやテープデッキなどのレガシー入力ソースに提供されます。 このチップは、96kHz よりも 48kHz のサンプリング周波数で優れた SNR パフォーマンスで動作します。PCM1804などの差動入力タイプのADCと比較すると フルスケール入力レベル近くでは歪み率がやや劣化する特性がありますが、アナログ時代のソースは平均レベルが低く、S/N、歪特性や忠実度もそれなりであるために実用上深 刻に性能の違いが問題となってしまうケースは殆どないと思って、コストも安く用途に必要十分な性能の24bit ADCチップを採用しています。 


Optional I2S Input Header

さらなるアナログオーディオの高みを極めたい向きにはオプションのI2S入 力ヘッダーを用意しています.

電源も供給されるので、貴方が設計した究極のアナログ性能を追求したADCボードや、フォノアンプ つきADCボードが簡単に搭載可能な設計となっています。


AUX-ADC and Potentiometers

AUX1 から AUX4 はアナログ風の操作制御を実現するのに便利です。
AUX0はマスターボリューム用を想定し、大型のノブを付けられるよう少し離して基板上に配置 されています
AUX1〜AUX4はゲイントリムまたはパラメータコントロールの変更用として例題のコードで使用しています。

ヘッダー J1 が用意されていますので、 外部のポットを使用する場合はオンボードのポットを取り外し、J1にポットを接続します。

Source Selector Switch

通常AUX-ADCは連続した値を読み取るのに使われますが、ここでは多値のスイッチとして使 われます。
シリーズ接続された抵抗で分割された電圧をロータリースィッチで選択しAUX-ADCで読み取 り、閾値と比較することでポジションを検出します。2回路ある残りの回路でポジションLEDを点灯させるのと、USB入力選択時のみCombo384のミュー ト信号を動作に反映させる用途で使用しています。

LED Indicator

MP6とMP7で制御できる2つのLEDが用意されています

入力信号インジケーターまたはクリッピング寸前の レベルインジケーターとしての使用を想定しています

DAC and Output Diver

オーディオ出力DACにはTI の PCM5102A/PCM5101A/PCM5100A が使用できます。これに続く出力ラインドライバーは3種類の方式が選択できます。

このラインドライバー回路はミュート回路をRCAピン差動出力とXLRバランス出力として構成するか、RCAピン差動出力専用として構成するかの選択をするこ とができます。 C114やC116とR126, R127の抵抗で構成されるLPF回路は実際のDSPの動作にあわせてカットオフ周波数を変えています。また、実装部品変更によりOPA1632バッファー回路周辺を省略 したRCAアンバランス出力 専用にすることもできます。

通常よくあるトランス式のXLR出力は下図上側のような構成で、これをアンバランス機器で受け る場合は下側の回路のような状態になるのでHOTとCOLD間の電圧は一定となります。

もしこの動作を忠実にシミュレートする回路だと以下のような状態で動作することになります。
このときアンバランス接続をした下側の回路ではアンプ出力が接地されるために赤矢印のように多 くの電流が流れGNDパターンを揺らしますし、駆動するICにとっても重い負荷となるために歪み率が悪化してしまうという問題がありました。

そこで、バランス出力時にはHOTとCOLD間の電圧が2倍になってしまいますが、受ける側で 絞って合わせてしまえば良い事と割り切って以下のような回路を考案しました。

VGが機器間の電位差を検出する入力になり、VGの電圧と同じだけ非反転出力の信号を平行にシフト させます。反転、非反転出力ともにゲインが1なので結果的にこれらを差動で使うXLR出 力は+6dBのゲインがあることになります。 VG端子による出力電圧シフトは非反転出力にしか反映されないのでXLR出力を使う際にはRCAピンケーブルを接続しないよ うにする必要があります。

周波数特性と出力の位相特性のシミュレーションです、ほぼ理想的な特性が可聴帯域外まで続いておりハイレゾオーディオ信号にも問題なく対応できる事を示しています。


PCB Design

今回もki-CADを使用しJLPCBでPCBAするという前提で基板設計を行いました。ver0.2までは2層で設計しましたが、性能的にパターンからくる 制約に限界を感じたのでver0.3以降は4層で設計しています。部品配置においてもチャンネルごとの部品配置を極力同じにするとか、クロストーク特性を向上 させ るために隣りとのパターン間にスリットを入れるなどして特に注 意深く基板設計を行いました。

PCB Ground and Power Rails (Top View):


アナログの電源パターンにおいては、電源ラインを通してクロストークする量を減らすために大容 量のデカップリングのコンデンサーから直接各ICへスター型のトポロジーで電源パターンを引いています。アナログとデジタルのGNDは分離されており、両者は DACチップのすぐ下で接続されます。 各オーディオ出力はDACのペアごとに切込みが入れられた銅箔のパターンを経由して戻っていくことで隣り合ったペア間でのクロストークを極力抑えるという戦略で設計してい ます。何でもベタのパターンで太く繋いでしまえば良いというものでは無く、性能を引き出そうと思うなら銅箔パターンも抵抗だと考えながらパターンを引く必要が あるところが難しい所以です。


Hardware Check/Evaluation (version 0.33J)

JLPCBにPCBAオーダーした基板は発注から10日で届きました。これにピンヘッダ、ソ ケット、リード部品など40 個弱 の部品を付ければいので数時間で完成します。手付けする部品代が2000円強でほぼ全て秋月電子通商で買えます、それとUSB入力用のAmanero Combo384互換基板はAliExpressで個人輸入できますが3000円程度必要です。2023年現在でもまだ品不足中のラズパイはどっかで探してくるしかありま せんね。ネットで一緒に試作に参加してくれる人を募ったところ10枚基板発注をできることになりました。 急激な円安進行で覚悟してましたが枚数が5枚から 10枚 になったことで何とか乗り切ることができました。

PCBA Arrived Board (ver0.33J)


今回はFreeUSBi作成用の基板も発注しました。

何箇所が修正が必要でしたが、全機能を動作させることができました。

以下は0.33J基板の修正箇所を記載した回路図のPDFです。

FreeDSP_OCTAVIA_0v33j_SchematicFixed20230928.pdf

一応動いたので、もっと性能を引き出せないか色々と検討してみました。
アナログGNDとデジタルGNDを一箇所だけフェライトビーズで接続していましたが、DC的に は接続されている状態でも両者の 電位差は実測で18mV程もあることに気がつきました。 両者間をフェライトビーズではなく直接ワイヤーで接続するとS/Nが改善されたので効果が 大きいポイントを探ってみたところ以下の2点を接続するのが効果的でした。
この対策は効果が大きかったので基板改版の際にこの間を0Ω抵抗で接続するように設計変更をし まし た。(Version1.00以降で対応します)


Hardware Check/Evaluation (version 0.1)

JLPCBにPCBAオーダーした基板は下の画像のように殆の表面実装部品が載っており、40 個弱 の部品を付ければいので数時間で完成します。

PCBA Arrived Board (ver0.1)


最新版イメージ  (ver0.32)

部品を取り付けたら、電源を入れる前に、まずラズパイやCombo384基板は搭載しない 状態 でショート等してない事を確認してから電源を接続します。

電源アダプターを接続したらSW2を入れて以下のオンボード電源の出力電圧を測定します。  こ のとき数秒間のあいだ電源インジケーターLEDが赤色に点灯し、やがて青色に変ります。

順番に書くと以下のようになります

  1. SW2とSW3をオフにします。
  2. DC 電源アダプターをボードに接続します。
  3. SW2をONにする(赤色の LED が点灯し、数秒後に青色に変わります)
  4. マルチメーターを使用して、GND 電圧を基準としたテストポイント #1 〜 #5 を測定します。
電源の電圧が高くU7 /U3 の放熱が不十分な場合、AMS1117が破損して電圧が超過してPCM1808やPCM5102が壊れてしまう可能性がありますので、ヒートシンクや空冷ファンなどで十分 な放熱対策を行うか、なるべく許容範囲内で低い電圧の電源アダプターを使用されることをお勧めします

これ以降はRaspberry-piユーザーのみ項目です
  1. SW3をONにし Raspberry-pi 用に +5V に電源を投入します。
  2. LED の色が緑色に変わります
  3. マルチメーターでテストポイント #5 を測定します。電源容量が Raspnerry pi を駆動するのに十分でない場合、テストポイント #5 の電圧が低下します。 このようなトラブルが発生するのでラズパイ使用時には3A 以上の電源を使用することをお勧めします。
  4. ここまで問題なく電源が出力されているのが確認できたらSW3もオンします。 
  5. 電源インジケーターLEDが緑色に点灯します。
  6. 40ピンソケットのpin2とpin4に+5Vが供給されているのを確認
  7. ここまで確認できたら、基本的なチェックは終了です。
一旦電源を抜いてからCombo384やRaspberry-Piを挿して電源を入れて下 さ い。



Measured Test Results

Audio  Performances

Remain Noise

(Under Construction)


Overall ADC to  Output Distortion

(Under Construction)


Inter Modulation

(Under Construction)



PCB Design Files

Git-Hub https://github.com/freeDSP/freeDSP-OCTAVIA(← 最新の設計ファイル類はこちらからクローンしてください)

Version Histories

VERSION Date Note
0.1 2nd, Apr. 2023 Initial PCBA release.
0.2
14th, May. 2023
Fixed some errors.
0.26
25th, May. 2023
Fixed 2 Layers Evaluation Version, (Ludwing ordered to JLPCB)
0.3 23th, Jul. 2023 New differential/Balanced output circuit. 4 Layers PCB design. (Wrong order of Source Selector Position)
0.31 26th, Jul. 2023 Initial Release Version (Fixed Source Selector USB Position)
0.32 14th, Aug.2023 Improved Coaxial S/PDIF Input Noise immunity


Example SigmaStudio Projects


→ Stereo Crossover Example Project のページへ



Enclosure Gallery




ソースポジションLEDを実装する前の画像、フロントパネル左側に4つのLEDが並ぶ予定。


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