TPA3116D2 2 channel Amprefire Modification
TPA3116D2 Stereo Amplifier XH-M543 Modification
TPA3116D2 中華BTLアンプXH-M543の解析と改造のページ
Introduction:
8ΩのSPユニットを使った2wayスピーカー用のアンプが欲しかったのでAliExpressで探したら300円で買えるXH-M543 と
いう基板を見つけた 、送料を入れても2枚で1000円もしなかったので明らかに部品代よりも安くて、自分で一から作るよりもこれを
改造し た方が安上がりだ。 この基板は
TPA3116D2一個をBTL接続2chで使うものでPBTL構成の基板と比較すれば大出力電
流は流せないが、2Ω負荷とかで使うのでない限り出力電圧は同じなので音量に違いはなく、今回の用途で
は負荷インピーダンスが高いので部屋で使う音量程度であればこの構成でもさして問題はないだろうと割り切った考えで2wayバイアンプ用途に2枚購入した。 音や基板の出
来は値段相応だろうとは想像していた が、期待どおり?に 少々手を入れないと使いにくいものであった・・・
Impression of Stock Condition
今回は届くのに3週間もかかった。販売のページの画像では入力の信号
カップリングコンデンサーがスルーホールにマウントされたリードタイプで交換が容易そうだったのだが、届いた基板は下の画像のようにMLCCのSMD
部品に変
更されていた。ここはオーディオ用のコンデンサーに交換しようと思っていたので残念だった、一方ヒートシンクが貼り付けタイプからネジ留めに変更されていた点は評価でき
る。諸々の理由であえてwebの画像通りのものに交換を要求することはしなかった、もちろんwebページの最大出力の記載も嘘ばっかなのはお約束で、
いまさら目くじらたててコメントする必要もないだ ろう・・・
TOP VIEW of XH-M543 (ヒー
トシンクを外して撮影しています)
BOTTOM VIEW of HX-M543
基板の上側の出力側から見ていこう、レイアウト的にはデー
ターシート の例 に 沿った平均的なパターン配置だが、 使用しているコンデンサーのESRが高いのだ
ろうか?スナバー回路の抵抗が 見当たらない。 出力リコンストラクションフィルターは同社のHX-M139 の
ように容量不足で磁気飽和を起こしてしまう様なトロイダル
コアではないものの、インダクタンスが33uHと大きいので低インピーダンス負荷では高域のレスポンスが低下してしまうので、サブウーハ用のアンプに使うのでなければ、
16Ω以下の低いインピーダンス負荷で使用し ない方が良いだろう。
入力側に目をやると、信号源インピーダンスが高くなると残留ノイズが増え
てしまうというTPA3116D2が持つ問題に対応するため前段にTL074(画像の中央下側のU2)のバッファーアンプを搭載している点は評価でき
る
が、TPA3116D2に36dBのゲインを設定し、U2で更に+20dBと合計56dBもゲインを稼いているのでラインレベルの入力信号で使うには増幅度が
高すぎる。直接マイクでも繋いで使うのでなければこんなにゲインを持たせる必要は無いだろう。 半固定VRでゲインの調整はできるが、これでは殆ど絞
りきった状態で使う事になってしまう。 テスト動作させてみたら、U2を通じて盛大にクロストークしているのが確認できた。
Found Issues
総合的に見てやはり改造する必要がありそうに思える、具体
的には以下のような点である。
入力感度が高すぎる、入力の半固定ボリュームを最大にすると、たった40mVで最大出力に達してしまう
出力を上げICの電源電圧が変動すると、U2での変動が音となって反対側のチャンネルにクロストークする、低域のサイン波をいれると1オクターブ上の
音がかなりの音量でクロストークして聴こえる
低域のレスポンスが落ちている、低域が出ない
ポップス音のミュート回路が電源オン時のみしか効かない
スイッチング動作が400kHz
オーディオ信号のカップリングに歪みが多いMLCCを使用している
上記のような素性が判ったところで、その原因を探るべく、まずは基板をトレースして回路図を起こし
てみた、以下に改造前の回路図を示す。
XH-M543 Schematic Circuit Diagram (Before
Modification)
旧バージョンの基板はC34が無く全くミュートが効かない回路だったらし
いのですが、届いた基板では電源オン時のミュートが効くようになっており、さすがにこの点は改善されたようです。しかし簡易的なこの方法だと、電源オ
フのときはpin12 のミュート端子はHレベルにならないのでミュートが効きません。 オーディオ信号系の定数を観るとC28/C30は オ
ペアンプ反転入力で入力インピーダンスが2kΩのなのでカットオフ周波数が80Hzとかなり高くなっています。U2で10倍に反転増幅された信号は
C3/C1を経由してU1に入力されますが、このゲイン設定だと入力インピーダンスは9kΩなので、この段でのカットオフ周波数は約17Hzとなって
います。この2つが低音が出ない一番の理由のようです。
U2の動作点はツェナーダイオードD1で一応は安定化した電圧の半分にバ
イアス
されていますが、実際に動作中の波形をチェックしてみたところパワーアンプを定格で4Ω負荷動作させた状態ではVCCの電圧に同期してU2の出力が揺
れており、それにつられてU2の後段では結構な量の揺れが音として漏れてしまっていました。 SP出力が20Vppの時に200mV近くもクロストー
ク して漏れ出てくるので、このままではオーディオ用途には使えないと判断し改造に踏み切ることにしました。
Modification Plan
改造のポイントは以下の点です。
必要十分な量だけにゲインを下げる
クロストークを低減する
電源オフ時にもミュートが効くようにする
スイッチング動作周波数を1.2MHzに変更する
オーディオ信号が通るカップリングコンデンサーを低歪なものに交換する
熱抵抗を低減するためにU1とヒートシンク間にグリースを塗布する
電源の安定度を向上させるために、電源逆接続時対策ダイオードD1をバイパスする
リコンストラクションフィルターの33uHのインダクターを低DCRの10uHに交換する、同時にスナバー回路も見直す。
上記の課題に対しては、具体的に次のような対策を講じます。
対策1:U2でゲインを持たせるのを廃し単なるボルテージフォロワーにすることでGND
の揺れや電源からのクロストークを低減させます。同時に入力インピーダンスを上げることでカットオフ周波数を下げ低域の周波数特性を改善します。
対策2:電源からのクロストークの量についてU2BとU2Cを比較してみたところ、バイアス電圧
の揺れも多少ありましたが、量的にU2Cの方が多かったので前段を使用し後段は使わないことにしました。
対策3:アクティブの駆動回路を搭載した小基板を作って全面的に手を入れることにしまし た。
対策4:U1のpin13を浮かせてカプトンテープで基板パターンから絶縁したうえで0.2mmの
ポリウレタン線でVCCに吊って動作モードを変更しました。
対策5:実装可能なコンデンサーを物色中です、音響用ケミコンかフィルム系の採用を考え
ています。
対策6:放熱性の改善のためにPCのCPU用グリースの余りを塗布しました。
対策7:D1のランド間をジャンパーし、取り外したダイオードを電源ターミナルの裏側に実装
することで、誤って逆接続した場合にはダイオードでショートさせる事で電源の保護回路を起動させて基板を保護することにします。
対策8:これは負荷となるスピーカー次第で最適値は変化するので、必要になった時に実施することに
します。
以
上の対策を盛り込んだ回路図を以下に示します、対策の対応する箇所にマル数字を記載しました。
Modified HX-M543 Schematic Circuit Diagram
赤色の部分は今回改造を実施したところ。 緑色の部分は未実施の部分です、こちらは測定したり実際に使いながら、ランニングで実施するかどうするか決めようと
思っています。
まだ対策8を実施していないのが気になる件ですが、リコンストラクションフィルターを
33uHのまま使用しても殆どのスピーカーでは高域端でインピーダンスが上昇するので実質的な影響が出ない可能性も高いのですが、インピーダンス補正がされて
いたり、4Ωのツイターがコンデンサー1発でフルレンジユニットとパラレル接続しているような場合には無視できないレベルの影響が出ます、4Ω抵抗負荷では周
波数特性が〜11kHz程度までに低下するのです。 以下に実測した負荷インピーダンスの違いによる周波数特性の違いを示します。 もし使用しているツイター
のインピーダンスが4Ωなら15kHzでは6dB以上もレベルが落ちてしまうので33uHのインダクターを10uH〜15uH程度のものに交換する必要があり
そうですね。
Input to Loaded Speaker Output Frequency
Response(12Vp-p Output, 縦軸はゲイン、赤線が8Ω負荷時、青線が4Ω負荷時)
また、上のグラフからも判るようにダンピングファクターがあまり高くはないようです、33uH
のインダクターはNFBループの外にあるのでのDCRの影響が出ている可能性があります、C14〜C17の容量を0.33uFに交換して周波数特性を改善する
方法もありますがインダクタンスを減らせは同じ太さの巻線でもDCRが約半分、正確には0.55倍に減るはずです、このような理由から適切なインダクタンスで
飽和電流が高くてDCR が低い良質なインダクターに交換したいところです。
Modification
3)
U1 Gain Setting Change
4)
Switching Frequency Change (400kHz -> 1.2MHz)
6) Filling Thermal paste
以
下のような箇所にて改造を実施しました。
(右の拡大画像:pin13をリフトアップし、ランドとの間にカプトンテープを貼って周囲と絶
縁してからφ0.2mmのPEWでpin17に接続しています)
3) Power ON/OFF Muting Circuit
Muting Driver Circuit & Universal Board
Layout Example
1), 2) Gain Reduction U2
初段を反転アンプからゲイン=1倍のバッファーに改造してから、U2のpin8とpin14を
カットしてジャンパー線で後段の回路を飛ばします。
5) Coupling Capacitor Change
対策5のコンデンサーには積層フィルム型のWIMAを使いました。MLCCの時は歪み感が高
かったので高域のヒステリックな歪み感 が減ってストレートな感じに変わりました。
8) Reconstruction Filter Cut-off Frequency Change
対策8の部品、
大
電流対応10uHのインダクター が届いたのでインダクターを交換しました。半田コテ2本使いでもなかな
か外せませんが基板の裏側からヒートガンで加熱するとハンダが溶けて簡単に外せます。
早速4Ω負荷での周波数特性を確認してみます・・・、20kHzでも-1dB程度のレスポンス
になりました。
Output Frequency Response (4 ohms Loaded )
これで4Ωのスピーカーでも高域が落ちることがなくなり安心して使えるようになりました。測定
はしてないのですがDCRの低下に伴ってダンピングファクターも改善しているはずです。予想どおり出音がチャンデバのセッテイングを変更する必要がある程に大
きく変わりました。
Impressions & Comments
ゲイン低減により約1Vでフル出力となりCDレベル(2Vrms)感度のアンプとして丁度
いい位になりました。 この改造に伴ってU2周辺のGNDの揺れの影響を受けにくくなったことでクロストークの量も実使用で許容範囲となりました。ミュ
ーティング動作に関しては完璧に無音ではありませんが、スピーカーが飛び出すような爆音はなくなりオン・オフの両方でミュート動作しています。
高域に荒れたヒステリックな感じがしてて気になるので、音声カップリングのコンデンサーを
低歪みなものへ可及的速やかに交換する予定ですが。その後となると実
際の波形を見ながらインダクターも交換するか?、スナバーの追加をするかどうか?、定数をどうするか?などをじっくりと使いながら決めたいと思います。
[Feb.15th, 2020追記]
リコンストラクションフィルターのインダクターを33uHから10uHに交換し、入力の音
声カップリングのコンデンサーをWIMA製に交換しました、高域のレスポンスが改善したのと、積層セラミックコンデンサー特有の歪みがなくなって一気にク
リアな高音になったので、細かいアラが気になるようになってしまったので更に手を入れなくてならなくなってしまう悪循環(好循環?)に突入してしまいそう
です、程よくバランスが取れていればそれなりな音でも放置できるのですが、実に悩ましいですね。
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でも各自、個人の責任において行ってください、腕に自信の無い方は絶対にトライしないで下さい。
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