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TAS6422 Amprefire Fix & Modification
TAS6422 Class-D 2.1MHz Switching
Full Digital Amplifier
TAS6422パワーアンプ開発の記録
Introduction:
ここ2〜3年はTI製の
TPA3116D2 を
使用した中華アンプ基板を何枚も買っては気に入らず改造に購入価格以上の費用をかけて手直ししながら使ってきたが、そろそろ 自
分で好きなようにデザインしたアンプ基板が欲しいと思っていた。 そんなタイミングで非常に気になるスペックの石が登場した、同社の
TAS6422 で
ある。 クラスDのパ ワーアンプ
は数多くあれど、なんとスイッチング周波数が2.1MHzという未知の領域の音を体感してみたくなった。 信号入力がデジタル接続でI
2 S
のみという点でどうするか引っかかってい た。
FreeDSP
Classic SMD A/B に接続する専用アンプという割り切った構成も考えたが、やはり普通のアンプとしても使えるものが作れないだろ
うか?とずっと考えていた。単純にADCを接続すればア ナログ信 号でドライブすることはできそうだが、これではわざわざI
2 S
接続して鳴らす意味が不明だし、フルデジタル接続の メリットが 体験できないことには作るにも使うにも意味が無く なってしまう。 しかし外部からのI
2 S
デジタル信号と切り替える には複数 のロジック ICが必要だ。
アナログ入力のアンプと違ってTAS6422はマイコンで設定をしてないと音さえ一切出ない、使い勝手を考えたら一般的なS/PDIFでフルデジタル接続でも鳴らせるよ
うにもしたいところだ。
今回は基板を作って電源を入れれば動作するという訳に行かないので、作るからには中途半端な簡易仕様では満足できずどんどん敷居が上がってしまうばかりな
のであった・・・
もし、これら全部を個別のICで載せていたら何個ものインターフェースICが必
要となって10cm x 10cmの基板だとデジタルプリ部分だけで一杯になってしまう、そこで登場した救世主が
PCM9211 と
いう少々毛色の変わった石でADコンバーターに加えてDIR、 DIT、ルーティングがプログラム可能なI
2 S入出力とこの基板の
ために存在するかのような内部構成で、スイッチャーとインタ フェース群が一体と なったような石ながら価
格もリーズナブル。 おまけに入力されているデジタル系信号のサンプリング周波数を判別できるという点も入力信号のサンプリング周波数に合わせて設定を変える必要があるデ
ジタルアンプにはピッタリなのであった・・・
Circuit Design Concept:
PCM9211が持っている機能を最大限に利用しつつ、コンパクトな 経
済的基板サイズに載る範囲でやりたい事を決めていった。PCM9211の基本機能として上限96kHzサンプリングのADコンバーター、同軸も対応の
S/PDIFレシーバー、I2Sの入出力、光対応のS/PDIFトランスミッターがあって、これらの間を自由にルーティングしてTAS6422に
I2Sで出力できるのだが、最近流行っているHDMIケーブルにLVDSでI2Sを流して接続するD/Dコンバーターとの接続も可能にして、アナロ
グ、光、同軸、LVDS-I2S、3.3VアンバラI2 S接続方式による音の違いを聴いてみたいという単なる技術的興味から入
力系が増えてしまい次のような回路構成となりました。
System Block Diagram
トランス使用の同軸出力回路も一度は 基
板に描いてみたが載りきれなかっ たので割愛せざる得なくなった。デジタル接続 という事もあって基板のスペースとコストの関係から も
ある程度割り切って同軸はトラ ンスなしの不平衡入力回路としたが、デジタル接 続なので少なくとも
これが原因でブ〜ンとハム音が載る事はないと思う(笑) デジタル出力系統についてはバイアンプ接続で鳴らす時の事を想定して付けてみたが、将来的には単
なるアナログ→S/PDIF, I2 S、同軸→光のコンバーターとしても使えるように信号ルーティング機能を対応させる予定。
PCM9211とTAS6422はPICマイコンからI2 C経由で制御、操
作子としてクリック付きのロータリーエンコーダーとボタンが一つだけ、表示は3桁の7セグLED(小数点付き)を電流ドライバーなしでPICのポート直で駆動するという最
小 限の 構成。 ver0.2ではデバッグ作業を快適にするためにI2C接
続のキャラクター液晶を接続することで開発環境を改善できるようヘッダーを追加しました。
Board Design Concept
最初に基板の大きさが決まっているので、これに載る範囲の部品を選定。一番の大物はヒート
シンクで24V電源でフルパワーの150Wも出したら30W近い熱が出る可能性がある訳で、軽量だがフィンが長くて取り付けネジ穴も
あって130円と安価に入手できる
30P61A (30mm
x 61mm x 30mm)を採用した、12V駆動ならかなり余裕がありそうなので普通に家庭で使う音量の範囲なら発熱量は4〜5W程度だから
16PB017-01025 と
いう(16mm x 25mm x
16mm)程度のごく小さいヒートシンクを貼り付けておけばなんとか耐えられるかもしれない。一方、最大出力を望むのであれば電源電圧は24Vで駆動する必要があるが、電
源電圧24V の時の
TAS6422のアイドリング時の電力はデータシートによれば0.8W強で貼り付けタイプの小型ヒートシンクでも対応できる程度だ、しかし2.1MHz動作時のアンプ部の
効率はデータシートによれは75%〜80%程度なので最大で
片chあたり50W出力のときPVDDに流れる電流は約5.6Aで、そのうちの33Wが最悪の場合熱になってしまう、測定時以外ではこれほどの連続出力をするケースはほぼ
無いとは思われるが、経験的にみてフルパワーで鳴らす機会が頻繁にあるのなら20W程度の放熱に対応できるヒートシンクを搭載する必要があるだろう。この
IC内部にはダイの温度センサーによるシャットダウン保護機能があるので、仮に小さいヒートシンクであっても動作が停止するので致命的な故障にはなりにく
いと思われる。 ちなみにシャットダウンする温度はマイコンからI
2 C経由で設定できるが、私は一番低い温度に設定して使用してい
るが、いまだ保護動作に入った事はなく、その前に過電流保護動作になってしまうのを何度も経験している。
基板上のコネクターレイアウトは入出力系のコネクターと電源(ACアダプタ使用、
φ5.5mmスリーブ)をリア側に配
置、反対側のフロント側にスピーカー端子を配置し、余ったスペースに無理やりロータリーエンコーダーと3桁のLEDモジュール、押しボタンスイッチを詰め込んだ。
実際にケースに入れる時の事を考えて操作部分の基板を切り離してライトアングルのピンヘッダーで繋いだり、ワイヤーで延長したりできるようにミシン目を
入れて切り離せるよう工夫をした。入出力切替式のI2 S端子は2.54mmピッチのヘッダーを基板の左側端に配置した。SMD部品
は実装が楽な2.0mm x
1.25mmサイズを採用、音質的な問題でMLCCが使えない箇所はスルホールタイプのケミコンやフィルムコンを採用した。 以下に簡単な設計仕様を記します。
Initial Version Board Image
Target Specification:
96kHz, 24bit Sampling ADC (2Vrms, Female RCA Jack)
Optical S/PDIF Input (max. fs=96kHz)
Coaxial S/PDIF Input (max. fs=96kHz)
LVDS-I2S (HDMI Connector) Input (max. fs=96kHz)
Parallel 3.3V Unbalanced I2S Input / Output (Select-able)
Optical S/PDIF Output
Screw Binding-Terminal Speaker Outputs
3digits LED Display
DIR lock LED indicator (Red)
ADC signal Indicator (Green)
LVDS plug detect LED indicator
RGB-LED Amp status indicator
Rotary Encoder
Push bottom x1
Interactive Operation UI
Single Power Supply DC 12V - 24V φ5.5mm/2.1mm Inlet (Positive-Center)
Schematic Circuit Diagram
ver0.1の回路は多少変更が必要になってしまったので、以下に近日製作予定の
ver0.2回路図を示します。
TASP6422 Amp Schematic (ver 0.2,
Part1of2)
動作解説1:
左下が電源回路でTAS6422のVBAT電圧の制限(上限19V)を超えてPVDD電
圧の上限一杯の 24VまでのACアダプタを使用可能にするために
Rohm
BP5293-50 という高効率DC-DCコンバーターでVBATの12Vを生成している、このPS1の代用品としてCUI製の
VX07812-500 /1000などの3端子レギュレーター互換ピン配置のものが使える、こうして得られた+12Vからシリーズレギュレー
ターでアナログ用+5Vと ロジック
系+3.3Vの電源を作っていますが、この+3.3V生成用のU2は結構発熱量が多いし、ほぼデジタル系の電源なのでSMPS化したほう良いかもしれませ
ん。 TAS6422のPVDD電源ラインには基板の表裏隙間なく実装することで最大8個の有機固体コンデンサーが搭載できるようにしました。基板上面側
のコンデンサーだけはSUNCON製の
5ME1000WGL 等
にして大容量化を図るのも良いかもしれないが、使用するACアダプタによってはインラッシュ電流で立ち上がらなくなくなる場合があるので程々にしておくべ
きだろう・・・
左上のPCM9211が入力のインターフェスICでOPA1652をゲイン1のバッファに
使っています。ここの動作点はPCM9211内蔵のADコンバーターのリファレンス中点電圧と同じになるようにしているのでC17とC18は無くても大き
くDCがズレる事はないと思いますが、念の為
ノ
ンポーラの電解コン を入れてあります。PCM9211のADCは24.975MHzのクリスタルのクロック
で96kHzサンプリングで動作していますがソフト設定で48kHz動作に切り替えることも可能、このほかPCM9211のpin28〜31のLVDS-
I2Sコンバーターからの入力線、pin11〜14のAUX
I/O(I2S入出力)があり、回路図右上側には、S/PDIF光レシーバーと同軸のS/PDIF入力、S/PDIF光トランスミッターがあって、その下でTAS6422
がI
2 Sバスで接続されています。D3のRGB-LEDは電源オンで青色、J8ジャンパーをショートでスタンバイ状態に緑色点灯、
TAS6422による保
護回路が動作している場合には赤色点灯します。 不測の事態に対処するためPICマイコンよる強制ミュート制御とLVDSでDSDが送られてきてしまった
時にミュート動作が可能なようにしています。 残念ながらPCM9211にはSRC(sampling Rate
Converter)を装備していないので、いわゆるハイレゾ192kHzの音源はデジタル接続での再生はできません。
TASP6422 Amp Schematic (Ver0.2,
Part2of2)
動作解説2:
2ページ目は左上からICSP対応のPICマイコン回路、その下はLVDS→I2Sコン
バーター部で、この先はPCM9211のI2 S入力に接続されます。 右側はロータリーエンコーダーにLEDとスイッチ部で、一見
無駄に見えるヘッダーと
ソケット(J9〜J12)がありますが、実はこれは点線部で基板を切り離して分離できるようにすることが可能になっています。 このページの冒頭の画像の
ようにライトアングルヘッダーピンとソケットで90度向きを変えて一体化することもできますし、パラレルワイヤー等でフロントパネルまで延長することもで
きるようにと考えました。
PCB Design
今回もki-CADとFreeRouteを使用して設計を行いました。何度も配置を変えな
がら自動配線のトライを繰り返して最終的に30本程の配線は完全な手動で描きましたが、かなりの部分をFreeRouteで描いています。回路的に一
見無意味に見える0Ωジャンパー抵抗は明示的にGNDパターンを分離した自動配線を可能にするために入れたものです。面がけしている部分のネット分割は結構細かく分けて
います。
Ver. 0.2 PCB Top View
Ver. 0.2 PCB Bottom View
細かい修正を施したVer0.2で2回めの基板を試作するつもりだったのですが、I氏から
「IRリモコンレシーバーを入れられないか?」という提案があり、それは便利かも?ということでIRレシーバーを追加し、PICからTAS6422のスタンバ
イ端子を制御できるようにピンアサインも変更しました。 他のマイナーな変更としてはロータリーエンコーダー周辺の部品を移動して固定ネジ穴がヒートシンクと
干渉する量を減らしました(小型のヒートシンクの場合は関係ないですが気分的なものです)ミリングの形状も変更したので多少は基板を割り易くなったと思いま
す。
今回もJLPCBにPCBAまでを発注、思い切って基板10枚試作のうち10枚全部PCBA
依頼しちゃいました(汗)ver0.1基板の時は基板5枚試作して2枚PCBAを依頼して中国から日本への送料込みの費用
は3,173円、今回のver0.3は基板10枚試作して10枚全部をPCBAしましたが送料込みの費用は$60強で5倍の10枚作っても値段は2倍程度とアマチュアの自
作でも気軽に利用できる程度のコストで作れました、ホント便利な時代になったものです。PCBAで上がってきたver0.3の基板の画像です。
Ver. 0.3 PCB Top View
Ver. 0.3 PCB Bottom View
Building Board
Ver0.1 TAS6422 Amp Board Photo
最初のバーション0.1の基板画像、この基板はJLPCB に
基板5枚製造を発注して、その内2枚だけを同社の標準扱いの部品に限定してPCBA(部品実装)を依頼、PCM9211だけは高額なキャリッジ交換費
用を払っても普通にデバ イスを購入するよりも安かったのでこれだけ特別に実装に加えました。肝心のTAS6422EQ1チップですが、国内だとマ
ルツの通販経由でDigikeyから買えそう です、最初のver0.1試作ではMouser
で購入 、ver0.3試作では中国のAlibabaで買ったのですが、石は安いもののエージェント経由でしか買えないので手数料を払って
も割安になるには少なくとも10個以上は買わないとダメで手間がかかっただけで安くはなりませんでした(涙)。 その他残りの部品の殆どは秋
月電子 とMOUSER で
購入。
手作業で残りの部品を実装しver0.1基板の動作検証をしていく過程で以下の点を変更、LEDのコモン端子駆動用MOSFETを削除しPICで
直ド ライブ化、LOCK表示のLEDの駆動MOSFETも削除、アナログ信号入力表示LEDの追加、LVDSレシー
バーの配線間違いを修正、TAS6422ブートストラップコンデンサ周辺パターン変更などの修正を盛り込んで、現在はこれらを変更修正したVer0.3の基
板の情報を掲載しています。
以下にPWM出力波形をキャプチャーしたものを示します、Analog
Discovery2のため帯域が狭いのでトランジェント波形は判断できませんが、左右chでタイミングをズラして2.1MHzスイッチング動作しているのが判りました。
上記の正/負出力の差分を次段のリコンストラクションフィルターでLPF処理することでアナロ
グ信号に戻る訳
なので、ここで使用する部品は音質に大きく影響します、なぜなら最終的な出力からはNFBが掛からない構成なので、この経路にあるものは何でも誤差の原因になり得るからで
す。この経路にある部品に起因する歪みを少なくすることは大事ですが、少なくとも使用するインダクターはあらゆる使用状態でも磁気飽和しないものを使わないと
見かけのインダ クタンスが無くなって痛い思いをすることになります。 今回は
サ
ガミエレク製の大電流20A対応のもの を採用しました。基板のパターンは13mm角までのSMDインダクターも使用可能になっていますのでお好き
な形状のものを使用してください。コンデンサ の方は理想的にはESRが一桁低いMKC(ポリカーボネート)を使いたい所です
がべらぼうに高価なのでMKP(ポリプロピレン)やMKH(ポリエステル)あたりで安価に流通している物で手を打ちました。
無信号時の消費電流は16V駆動時で約165mAつ
まり2.6W強の発熱があります、高速スイッチングなのでクラスDのアンプにしては消費電力が大きめですが、それと引き換えにアナログライクな高域音のスムースさとデジタ
ル接続ならで はのクリアな音の輪郭と音像定位の安定感ある音が得られました。
Ver.3 AMP BOARD PHOTO
画像ではPIC16F1829が挿っていますが、このバージョンの基板からはマイコンをPIC16F18364に変更しました。理由はプログラムが肥大化し
て入らなくなったことと、FLASH-ROM領域が2倍になって値段も安くなるためです。ボード見た方からの助言で空きポートに赤外線リモコンの受光器を搭載
しました(ソフトウェアの対応は未定です) 未使用時の自動スタンバイ移行が可能なように、TAS6422への制御線も接続しました。 それと表示部の基板の
分割がやりにくかったのでコネクター部分のレイアウトを少し変えています。 発熱が多かった3.3VレギュレーターもCUI製ものに変更し、ついでに12V用
の石もCUI製にしてみました非常に小さいものですが高効率なため殆ど発熱がありません。 この基板ではリコンストラクションフィルターにSMDタイプ のHA72L-12654R7LFTR (13mm
x 13mm)を使用していますが、基板はさらに低DCRなサガミエレク製のインダクターとの両方に対応しています。
Software Development
Microchip提供のMPLAB Xで開発、今回初めてMCCが吐いたコードを使って作ってみました。以前のスクラッチからだとデータシートの
熟読が必須だったのが、今回は殆ど読まないで作れちゃたので時代の流れを 感じてしまいました。 開発環境はこんな感じで進めています・・・
A snapshot of debugging.
I2C
接続の4行x20文字キャラクター液晶モジュール を増設したので、豊富な情報量の表示に
助けられて順調に進行中。このLCDは5V駆動なので通常はレベルシフタを挟んで駆動しなければ使えないのですが
鬼
改造することで強引に3.3Vで動作 させています。 公開してるコードはI2Cブリッジのアドレスを0x25に設定しているので、ソースコード
"i2c-lcdlib-ceg003400.h"
の21行目の値を変更するかI2C液晶裏のエクスパンダー基板上のA1をジャンパー接続する必要があります。 ちなみに、机の上の白い大理石板状のものは
麺
打ち用のペストリーボード でコーリアン素材のため絶縁性があり、かなりの高温に耐えられるのでハンダ付けや
ヒー
トガン 作業にも重宝しています。
PCM9211とTAS6422はPICマイコンとI2 Cで接続し、
PICは必要なI/O数か
らPIC16F1829を選択。基本的にタイマー割り込みで表示系と操作子の読み取りを行い、これをドライバーとしてメイン関数で操作の流れを記述というスタ
イルで構築、ロータリーエンコーダーは1回転24ステップのクリック付きなので、クリック無しタイプの1/4の分解能しか設定できないため単純にエンコードし
ただけだと0.5dBステップでピンからキリまでフルにゲイン可変するためには、なんと10回転以上も廻す必要があるため、これはチョッと耐えられないので
ロー
ターリーエンコーダーを操作する際の角速度を検出して最大で8倍速までアクセレートするようにした。 LEDの表示は3桁で各桁にドットが付いているダイナミック
点灯タイプなので-10dB以上では0.5dB単位の表示を、それ以下では小数点の点滅で0.5dBのステップを表現するという涙ぐましい努力を密かにやって
ます(笑) 操作ボタンはただ1つで、通常はフェーダーのゲイン表示、短く押してからローターリーエンコーダーを廻してソースを選択、もう一度押せばフェー
ダーのゲイン表示、もう一度ボタンを押せば戻って選択状態が保存されるというシンプルなもの。 またゲイン表示状態でボタンを長押しすることで細かい設定のコ
ンフィグレーションがで きるモードを別に用意しています、こっちは短く押すと次のパラメーター設定に移り、続けてI2Sヘッダの入力と出力の切り替えを選択
し最後は設定保存してからゲイン表示に戻ります。 基板に入りきれなかったのでパターンはありませんがプッシュ
クリック付きのロータリーエンコーダーなら回転ノブだけで操作ができます。 PCM9211のDIRがロックする範囲は192kHzまで対応しているが、
TAS6422が96kHzサンプリングが上限で、さらにこの石は入力しているI2S信号のfsに合わせて設定を変えないと音が出ないのでPCM9211の機
能を使いI2 Sラインを常時監視してfsが変化したら再設定するようにしています。
TAS6422特有のプログラミング上の注意点として以下の点がありました。
電源オン直後に自動でチップ自身によるDCインピーダンス負荷測定が実行されます、SPが未接続だとここでエラーになります。
電源オン後の最初の設定時に、クロック同期エラーフラグが立ってしまうのでクリアする必要があります。
警告フラグは明示的にクリアする動作をしないとフラグが立ったままで、保護動作は持続しRGB-LEDが赤点灯のままになります。
ソースを切り替える際にごく短い高レベルのスパイクが出力され過電流フラグが立ち、時にオーバーカレントで保護動作に入ってしまう事があります。
現在まだAC負荷インピーダンス測定による保護機能は使用していませんが’、ショートや断線、
誤ったネットワーク回路接続によるC負荷などの人的ミスを電源オンの度に自動で指摘できるという新機能は今までにないインテリジェントなアンプが作れるという
点で目新しいものです、 音量、バランス、ソース切り替えまでインプリメントしたところでPIC16F1829マイコ
ンの容量が足りなくなってきたのでピン互換で使えるPIC16F18346に移行しました。
Download (Version 0.1 - 0.2)
Board & PIC Software Archive (MPLAB X) :
Git-Hub
Download (Version 0.3 or Later )
Audio Performance Check & Sound Impressions
まずパワーアンプ部から、4Ωダミーロード負荷での歪とノイズのチェックをしてみまし
た。 計測前にまずアナ ログ信号測定系の性能チェックから。
Electrical
Performance Check(Board version 0.1Mod)
Measurement System Performance Check
Result: (E-mu 0404USB Line-Out to Mic-Input performance)
\
0404USB
は か
なり古いモデルだが内蔵オペアンプを低歪なもの(LME49990)に交換しているので、測定に十分な性能がある事が確認できた。
測定系の性能の確認ができたので、ここからが実際に動作させて測定した結果です、電源電圧は
16V駆動。ソースは
TOSLINKによるS/PDIF光接続です。アンプ出力をダミーロードに接続し、その両端の電圧を自作のバランス型のアッテネーターで分圧し0404USB
のMic入力に接続して測定しています。帯域制限フィルターの類は特に使用していません。
TAS6422 1.5W output into 4ohms load Distortion Analysis (
PVDD=16.5V, fs=44.1kHz, Optical S/PDIF to Speaker-Out, 4ohms Dummy-Load
)
1.5W出力時では通常のクラスDアンプと比較してかなり低歪なのと、小音量でも高音域の音質
がクリアでディテー
ルが失われない音が最初に聴いた時の第一印象でした。音像の定位に関しても全く揺れは感じられずビシッと決まるので安心して聴いていられる音と感じました。アナログ接続で
は必ずといっていいほど観測される商用電源周波数(東日本なので50Hz)由来のノイズが全く見当たりません、これもデジタル接続の利点のひとつ。
TAS6422 28W output into 4ohms load
Distortion Analysis (PVDD=16.5V, fs=44.1kHz, Optical
S/PDIF to Speaker-Out, 4ohms Dummy-Load )
出力波形がクリップする寸前の出力スペクトラム、整数倍の歪が満遍なく発生している、この
辺りがこのアンプの特徴的な音色といえばそう言えるのかも知れない・・・・、保護回路のオーバロード検出機能は非常に敏感で、あと少しでもレベルを上げる
と保護機能が動作を始めてしまいます。
次は電源電圧16V、ノンクリップ最大出力での周波数特性です。まず8Ω負荷で14W出力
時の出力周波数特性をテストした結果です
Power Bandwidth @8ohms dummy load
(PVDD=16.5V, fs=44.1kHz, Optical S/PDIF to Speaker-Out 14watts)
ほ
ぼ真っ平らでした。可聴帯域外も十分な減衰量が得られていました。
同様に4Ω負荷で28W出力時の出力周波数特性をテストした結果です
Power Bandwidth @4ohms dummy load (PVDD=16.5V, fs=44.1kHz, Optical
S/PDIF to Speaker-Out 28watts)
8Ω負荷と比較すればわずかなリップルが見えますが可聴帯域内は十分にフラットであり、4Ω負
荷時でも高域のレスポンスが落ち込んでいないので、リコンストラクションフィルターの定数もこれで問題なさそう。
次にPCM9211のADCの特性をチェックしました
PCM9211 ADC Performance @Input Level
-24dB below F.S. (ADC to S/PDIF OUT, fs=96kHz)
やや低めのメゾビアノレベルの入力レベルという厳しい条件だが、残留ノイズレベルは十分に低
く、高調波歪も見当たら ない良好な特性である。
PCM9211 ADC Performance @Input Level -2dB below F.S. (ADC to S/PDIF
OUT, fs=96kHz)
通常のADCでは最大入力レベル寸前で最も歪率が低くなるものだ、しかし本機で使用しているPCM9211が搭載するADCは、S/Nやダイナミックレンジは問題ないのだ
が、入力信号の振幅がフル入力レベルに対して-26dB付近からレベル上昇につれてADCの歪の量が増加していき最終的にはフルレベル入力では0.04%付近
に達してしまいます、データシートによればフルスケール入力(-1dB)のときTHD+Nで-85dB(0.0056%)以下となってるので、聞くに耐えない
ほど多くはないにしても、スペックには達していないようです。 単に入力レベルを絞りさえすれば歪みは0.001%台へと減るので現状でもJ~POPのシング
ルのような極端に平均レベルが高い楽曲でなければ時々しか歪みが多くなる領域まではいかないが、この量だとパワーアンプ部の性能と比較しても無視できない量な
ので、何が問題なのか周辺回路や部品の問題によるものか何なのかを切り分ける必要を感じます。 多少S/Nが悪くなるが、PCM9211内蔵のデジタル処理の
アッテネーター段でゲインを稼がせてアナログ入力レベルを絞って使うほうがS/Nは悪化するものの実用的にはむしろ良好となる可能性も考えられます。
Sound Impressions
まだ十分に大音量で聴き込む時間が取れないので、BGM的な音量から通常の家庭で聴く程度
の音量での印象です。
試聴は光接続S/PDIFで44.1kHzのPCM音源を使用、一聴して気づくのは音像の
定位が非常に安定していて揺れないこと、例を上げるとダイアナ・クラールのアルバムwallflowerでSuperStarを再生した場合に歌が入って
きた部分でずーっと裏側で白玉で伸びて鳴っているストリングス音が他の音源に引っ張られて揺れてしまうアンプが多く、そうなるともうリラックスして聴いて
られなくなってしまう性分なため、アナログなクラスDのアンプでは電源の安定度によって定位感の安定度合いが変わってしまうように感じる事が多かったが、
この石ではその傾向は全く感じない。 描かれる音像の輪郭はクリアであり音量設定を相当な範囲で上下させてもそのままの定位を保っているし、相当に音量を
絞っても音がボケたり霞んだりしないので安心して聴いていられる、この辺りはデジタルの音量コントロール由来の利点であろう。 音色的な面では特にトライ
アングルやチャイムなどの高域のメタルパーカッションで澄んだ音がする楽器の音がアナログアンプのときのようにスムースに鳴るのが印象的で、このところ
ずっとクラスDのアンプばっかり使っていたので暫く忘れていた感覚であった。極言してしまえば大半のクラスDアンプではタンバリンの音が「カシャッ」と
鳴ってるのが「グシャ」と、「チャリーン」と鳴ってるトライアングルが「ジャリ〜ン」いう感じのやや荒れた
感じや濁った音がしてしまうことが多く、MLCCが音声のカップリングに使われていたり、リコンストラクションフィルターに使われているインダクターが粗
悪だったり、スイッチング周波数が低かったりといろんな理由があったからだとその理由は判明しつつあるが、やっと大きな不満を感じないで聴いてられるクラ
スDアンプに出会えたように思える。PVDDの電源のコンデンサーに330uFの固体コンデンサーを8個搭載しているが、このうち上面に実装している5個
を大容量なSUNCON製の
5ME1000WGL 等
に換装したものとの比較試聴とか、大音量時の印象とかアナログ入力の音質とか、デジタルでの接続方式による音の違いなどが評価できる機会があれば追記して
いこうと思う。
Connectivity Check with NothFoxDigi
Board
たかじん さんから頂いた
NorthFoxDigi
基板 とLVDS接続して96kHzまで動作するのを確認しました。アンプの石は96kHzまでしか対応できないので192kHzで
は音が出せませんが、PCM9211のI2Sピンヘッダーと光S/PDIF出力からは192kHzまで出力できてるのを確認しました、PLLなどの余分な変化を受
けずに直のタイミングで伝わるこの方式はI2S本来の音が出せるのでDSPプリアンプにもLVDS入力を付けたくなりました。彼がオシロでS/PDIFとの
ジッタ量の違いを動画で見せてくれてるのでリンクを貼っておきます。
De-facto Standard of LVDS-I2S Inter-Connection
LVDS接続と同軸S/PDIF接続を比べて気づいたのですがHDMIコネクターを使った
LVDS-I2Sの仕様って、HDMI本来の規格を無視して勝手に使っている状態なので、何が正しいとは言えないのだけれど、市場でのシェアが多い方式がデ
ファクトスタンダートとなるのが市場の常であり、いずれは長いものに巻かれる式に淘汰されていくものと思われますが、SONORE
Computer Audio が公開している資料 によればHDMIコネクターを使ったLVDS-I2Sの接続仕様には大きく分けて2つの接続パ
ターンがあるようで す。差動信号
をHDMI規格のピン接続仕様と同じアサインのものを「+」で、逆相でアサインしているものを「ー」で表記すと以下のようになります。BCLKとMCLKは全
て同じなのですが、なぜかDATAとLRCKが逆相接続のグループと、そうでないグループに別れてしまっています。
Brand
DATA
BCLK
LRCK
MCLK
PS
Audio
-
+
-
+
M2Tech
-
+
-
+
Denafrips
-
+
-
+
Empirical
Audio
-
+
-
+
Musica
Pristina
-
+
-
+
Channel
Island Audio
-
+
-
+
DiDiT
High-End
-
+
-
+
Matrix
-
+
-
+
X-Sabre
-
+
-
+
HiFime
-
+
-
+
Aune
-
+
-
n/a
wyred4Sound
+
+
-
n/a
LKS
+
+
+
n/a
Wadia
+
+
+
+
SMSL
+
+
+
+
Gustard
+
+
+
+
Pink
Faun
+
+
+
+
Audiobyte
+
+
+
+
Rockna
+
+
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JACS
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Singxer
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一覧にして見ると、やはりアメリカ勢PSオーディオ組が優勢のようですね、HDMI規格と同じ極性の接続でメ
ジャーなのは
Wadiaぐらいでしょうか、それと中華系のメーカーも多いように思えます。では具体的にDATAとLRCKが逆相接続になる機器と接続するとど
うなるの?というと、「音は出ます」しかし左右chが逆になり出力が位相反転して 、
ごく僅かではありますが波形が1LSB ぶ
んだけ並行移動します。 現状のTAS6422基板 は自分が持ってるGustardのDDCを 何
年か前に解析した時の資料を見ながらこれに合うように設計したので同社の製品やWadia、 SMSL
等との接続なら問題ないのですが、現在ではマイノリティ組の仕様になってしまいまし
た。 基板の改造で対処してしまっても良いのですが、確かTAS6422のレジスタ設定で左右chの入れ替えができたような気がするのでソフト切替えで変更できるかどうか
検討してみようと思いま
す。 ただしデータは反転出来なかったように思うので当面はSP端子の極性接続の挿し替えで対応が必要ですね。 根本的に基板の設計から変更する機会があれば74LV86
をI2 S経路に入れてPCM9211のGPIOでソフト側から設定で位相切替えに対応できるように仕様を追加しようと思い
ます。
Casing
いつまでも基板を裸で使っていては壊してしまいそうなので、ケースに収めることにしました。7セグLEDとロータリーエンコーダー部分の基板は分
離可能に設計しておいたので、分離した基板間を配線で前面パネルまで延長して接続します。あらかじめ基板の
切離し部分には細かいミシン穴を開けていたのでですが意外に頑丈でそう簡単には折ることができなかったので両面からカッターで何度も引っ掻いてVカット加工することでなん
とか折ることができました。圧接のリボンケーブル&コネクターが使えるように2列のピンヘッダーにしておけば良かったなと今頃になって気がつきま
した(涙)
基板が分離できたことろで収めるケースですが、VDD電源のデカップリングキャパシターを超低ESRのSUNCON製1000uFに換装してある
のでスリムな背の低いケースでは収めることができず、無理なく収まるタ
カチ製のKC5-13-15BB を採用しました、このケースは前後パネルが1.5mm厚の完全な平板なので非常に加工が楽に行えま
す。
こ
こで、長年欲しかったボール盤から心変わりして輸入したCNC3018pro
MAXの登場です。まだ十分に使いこなせてませんが、まずは使わないことには上達しないので今回は電ドリを封印してずべてCNC加工でやることにします。 CNCマシンは
種別的には3軸のフライス盤なので、単なる穴あけだけでなく、ザグったり、切り出したりできますし、V型に尖った半円形のミルを使えば細かく彫刻
することもできるのでパネルの穴あけから文字入れまでこれでやってみることにしました。
パ
ネル加工に適切なミルの回転速度が判らなくで切削したアルミが摩擦熱で溶けてくっついてしまったり、溶けたアクリルがミルに巻き付いて溶融3Dプ
リンター?みたいになったりする失敗を経験しながらも、何とか良さそうな加工条件を出すことができて加工することができました。
穴
あけには3.18mmのフラット エ
ンド型ミルを、文字入れにはV型のミルを使いました。前後それぞれに30分程かかりますが観てるだけなので楽ちんで、これまで手にマメ作りながら
ケース加工していたのが遠い昔の話しとなりそうでもう手放せそうにありません。
・・・
というわけで、完成したケーシングの画像がこれです。
Front
Face View
Rear
Face View
Rear
Inside View
前面パネルの裏側に練習で彫り込んだ文字が見えてます(笑)、レタリング文字は彫り込みなので
消えることはありませんが、絶対に失敗は許されないのでマシンまかせとはいえ非常に緊張します。 それでも手加工よりはるかに上手に加工することができまし
た。
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