インピーダンス直読測定システム ver. 2

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制作から30年以上経過した初代機の近況

最初の記事は1991年に書いたものだから実に21年ぶりの更新ということになる、前作はさすがに 30年以上も経過しているため初代機はスイッチの接点が 接触不良を起こしかけていたりケミコンの容量抜けと思われる特性の変化など寄る年波に勝てなさそうな状態だったので、実は部分的なニューリ アルの構想を立てていた。ver1 具体的には不安定で歪みが多い8038波形ジェネレーターに代えてDDSを採用し、DDSの制御、周波数測定とAC電圧の読み 取りをPICマイコンで行うというもので自動で周波数をスイープしながらデーターの収集を行い最終的にはPCでグラフ化するというプランであった。 しか しながら測定のスタイルは旧態然としたままであり測定結果をグラフ化したりする行程まで作り込むには趣味に費やせる時間が少なくなった身にはやや過大な労 力を要するものに感じられ部品等はすべて入手したものの制作に掛かれない状況がここ10年ほども続いていた。



 時代が変わるにつれパソコンの環境もレガシーなインタフェースはどんどん無くなり、 昔のPCなら便利に使えていたパラレルポートやシリアルポート等は搭載しないのが普通になり不便を感じていた、一方ノートPCに至っては数万円も出せば十 分すぎる位のパフォーマンスを持った製品が入手できるようになってきた。私の目的は計測器を作って満足することではなく、それを使っていかに効率的かつ直 感的にスピーカーエンクロージャーのチューニングを行うのかという点に尽きるのでシステム全体を自作することには拘る必要はなく「いかにラクにしてチュー ニングに便利な武器を手にいれるか」というコンセプトを全面に打ち出すことにした。 この構想を固めるきっかけになったのは自宅のパソコンを PowerMac G4からiMac2011年モデルに買い替えた際ParallelsでWindowsを同時に実行できる環境を構築した、それまでefu 氏開発のWaveSpectraしか知らなかったが、同氏開発のWaveGeneと組み合わせるとリアルタイムで周波数特性が、それもかなりの精 度で測定できることを知っ たことが大きい、このような実用に耐えるソフトを無償で公開してくださっている氏には心から感謝したい。 同氏のソフトウェアを組み合わせることでノート PCを使って、リアルタイムにスピーカーのインピーダンス特性を直読できるメドがたったので今回の記事発表の下りとなった。
 何よりも気が向けば即車内に持ち込んで測定できるノートPCの機動性が手に入るのが嬉しい。
(Block Diagram of original CyberPit version Speaker Impedance Mesurement System)
Fig2

電圧→電流変換器を使うことで、一度電流値を校正してしまえば、あとはただV3の電圧を測定するだ けで済む使い勝手の良さは好評だったが、グラフをプロットする手間が苦痛なので根性が必要な点が要改良のポイントであった。

 実は2000年ごろからV3の電圧計の代わりにPCサウンドカードのオーディオ入力を接 続してWaveSpectraで測定値のピークホールド表示させながら周波数を振ってグラフを描かせることでLogスケールではあるがインピーダンス特性 グラフが得られることには気づいていた、カーソールを使って共振周波数を直視できるというワザを何度か使っていたが、ただこの時にはY軸をリニア表示できる 事に気づいてもいなかったし、WaveGeneの存在すらも知らなかった、何よりも借り物のPCしか自宅に無かったのでその間に数回試しただけであっ た・・・・



Speaker Impedance Mesurement System version 2


最初±2電源で作ったが、DC12Vの単電源で動作するように中点電圧を生成するLT1010をもう一個追加した、ACアダプターで動作可能。 4558 の代わりに今は亡き三菱製のオペアンプを使用。
使い方は右側のPIN端子にA/D, D/Aを接続し、左側のターミナルに供試スピーカーを接続する。
赤色のプッシュスイッチを押すことで10Ωの金属皮膜抵抗の抵抗値をワンタッチで測定できるようにして校正操作を容易にしている、右上の水色の端子は実験 用の電源端子。

       Schematic
今回のキモとなる電圧→電流変換回路である、前作と基本的には同じであ るが車載環境でシガーライターソケット等から簡単に電源を得て測定で きるように片電源で設計している。 ごく短時間なら新品の006P電池でも一応動作するがレギュレーションが悪くすぐ消耗するので推奨しない。

一番上側のオペアンプで供給された電源から作った約5Vの電圧をバッファーし、これを測定用の仮想グランド電位にしている。
 電圧ー電流変換回路はLEDドライバー等でよく使われている方式だと正負の両極性オーディオ信号には対応できないため、本回路はそれらとは全く違ってい ることと片電源仕様と相まって回路は多少込み入ったものとなってい る。
  回路図の上から2個目のオペアンプ4556では入力(DACの左チャンネル側のみ使用)された信号電圧と、その出力にシリーズに挿入された抵抗200Ω (Rs=100Ω+100Ω)の両端に発生する電圧EはDUT(被測定物)のインピーダンスには関係なく常に同じになるように増幅される、結果的にはオー ムの法則よりオペアンプ出力に挿入された200Ωの抵抗に流れる電流Iは(I=E/Rs)で計算できる。つまり被測 定物に流れる電流は常に入力信号の電圧Eを抵抗Rs(=200)で割った値に比例し、信号源の電圧がそのまま一定なら流れる電流も一定となる。 結果的に スピーカーが入力信号電圧に比例した電流で駆 動される事となる。 もしDACの出力電圧が小さくて測定がS/N的に苦しいときはRsを100Ω一個に減らせば、入力電圧1Vrmsで1オームあたり 10mV (つまり0.1V@10オーム)の出力がLEFT側で得られる。 もちろんVer1.0と同様に任意の周波数のサイン波を入れて、LEFT側出 力をテスターのACレンジやミリボルで読んだ値をLEFT側なら100倍、RIGHT側なら10倍すればその周波数でのインピーダンス数値として読むこと ができる



測定用グランド電位を約5Vに持ち上げた仮想グランドを使用しているので、車 両電源を使用している場合 被測定スピーカー用端子を車両のグランドや電源に接触しないように気をつけること。 なおピン端子のコールド側は車体と同 電位 なのでオーディオインタフェースと車体のマイナス(グランド)とは繋がっても構わない

測定に際して、騒音や振動があるとスピーカーに起電力が生じ、その影響で測定誤差を生じるので注意すること。 またユニットの置き方でも測定値が変わって くるので、特にユニット単体で裸の場合は吊り下げるとかして周囲の影響を受けないようにすること。 すでにマウントした状態でもネジの締め方ひとつで値が 変化するのが違いとして見えてくる位に敏感なので、音圧しか測ったことがない方はぜひ体験してみてほしい。



fig4
ノートにPCに内蔵されているオーディオ回路では基本的に性能が不十分(特に低 音域が切れている事が多い)なので比較的安価で容易に入手できるUSBオーディオI/Fを使う。 インピーダンス測定だけであればDuplex動作にさえ 対応していれば何でも良いが、efu氏のソフトはDirectSoundやASIOにも対応しているので後々も歪み率や周波数特定を見る測定器として使っ たり、ジッター量を測定するなど オーデォアアナライザ的な用途にも活用する可能性があるのであれば、後々のことを考えて24bitや192kHzにも対応した高性能品のチョイスを薦め る。

次章では、実際に測定するためのセッテイングと手順を解説します。

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[この資料の利用上の注意事項]
 本資料はカーオーディオ関連機器用途を想定して、hilo個人が趣味で回路設計 したものであり、性能及び動作等の一切を保証するものではありません。   従って本資料に基づいて機器を製作した際に、機器が動作しない、もしくは、 期待した性能が得られない等の障害が発生したり、万が一に事故等が発生したと しても、当方は一切の責務を関知しないものであります。  従って実際に機器の製作を行う際は、あくまでも各自、個人の責任において行 ってください。
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