NTTL(Negative Tapered Transmission Line) Speaker Enclosure

逆テーパー型トランスミッションラインスピーカーの製作


Introduction:

理想的には小口径でありながらFsが十分に低く、Qms が大きく、波動の 節を揺すれるくらい丈夫な振動板で、最大振幅が稼げるものという条件に合致するSPユニットを使いたいところであるが、予算的制約からまずは手持ちのSP ユニットで製作してみて、イケそうだったら本格的にユニット選定からやり直すつもりで進める事にした。手持ちのSPユニットの中から選んだのはこれだっ た。
 インピーダンスカーブの山が鋭く立っている特性からも判るように、ダンバーの引っ張りが弱く、振動板が非常に軽く動くユニットで最大振幅 が20mmまで許容出来る点が低域の音圧を稼ぐには良さそうな気が した事に加え公称Fsが53.8Hzと非常に低かったはずだが、実測した結果はこの通り。

 実は、いつのまにか仕 様変更されていたのであった。(涙)

エンクロージャーの設計 ver. 1

想定外のことで、やむなくSPユニットのFsは無視したエンクロージャーの設計をしなくて はならない事態となってしまった、なぜならファンダメンタルな 共振周波数が80Hz近いエンクロージャーなんぞ、わざわざこのような方式にしなくても簡単に作れるので、やる意味がないと感じたからである。
そこで今回の第一の目的はTL型は内容積よりも音道の長さが重要であり、確かに効率には関係するが、バスレフのような内容積に反比例して共振する周波数が 変わる訳ではないという事を確認することと、一体どこまで細い音道で使い物になるのだろうか?  という疑問を解消すべく、可能な限り細い音道断面積のエンクロージャーで実用的なものが作れるのかというテーマに挑戦する事にした。
使用したSPユニットのスペックは、Sd=51cm2、取り付け穴径93mmφというもの、バスレフ箱の制作経験からSd の半分以下の開口面積だと支障が大きい事は経験上から判っていたので、理想的には開口面積はSdの半分は確保したい、奥行きと高さはそのままで、音道の幅 を180mmに拡張した場合には閉塞端の音道断面積が Sdの約2倍、開口部の断面積がSdの約1/2倍で閉塞端と開口面積比が4:1となり、ストレートな音道の約0.8倍弱で済む設定とした、もしこの比が 5:1まで大きく取れれば約0.72倍と全長はかなり短くて済むが、閉塞端の面積をベースに考えるとこの比率が大きいので開口面積を確保するのが困難とな り実際に折り曲げ て収納したエンクロージャーのサイズを考慮すると悩ましい。 4回折り曲げ音道というハンディと、Sdの1/3しか開口面積がないため実際に効率が低下し影響が生じるのは 解っているが、ウォールエフェクトを利用しローエンドを稼ぐブックシェルフスタイルの運用で壁面に沿って配置するという前提での実用レベ ルの限界を知りたいという意図もあって、エンクロージャーの幅に関してはSP取り付け穴径93mmに対して音道の幅が96mmとほぼ限界まで小さいエンク ロージャーにしてみ た。 本来の特性を得るにはこのままエンクロージャーの幅を広げて音道の幅を180mm程度で作れば効率の低下が少なくなりスタンディングでも十分満足のいく特性に近づくと思 う。
 そこで、設計コンセプトはブックシェルフの名前どおりに本棚に収まるように高さをA4サイズ以下にするという条件の元で(奥行きは相当オーバーしている が・・・)設計してみた。 まずは控え めに50Hz付近での共振を想定して エンクロージャーを設計してみたのが、これ。

Negative Tapered Transmission Line Enclosure (Version-0.1)


実際に製作してみた、外側は板厚12mmのコンパネで、音道の仕切りは板厚9mmのMDFで作成

外枠を組み立てる前に音道を構成する仕切板の位置をマーキングしておきます。一旦組んでしまうと採寸がやりづらいのと、外回りを接着する際も目印になるの でオススメ。


板厚がチョツト薄いかな? と思いましたが、ある意味補強桟だらけの構造なので、太鼓構造による鳴きの問題は殆ど気になりませんでした。

まずは、吸音材なしでのインピーダンス特性

電気的インピーダンス特性における二つの山の間で位相が0度になるポイントからファンダメンタルな共振は50Hzにあることが判ります。

同じく吸音材なしの状態で開口部から放射される音圧の周波数特性

吸音材を入れてないので奇数次の共鳴がハッキリと見て取れるが、SPユニットを閉塞端から約20%オフセットして取り付けている為に、5次の共振がある はずの 320Hz 近傍には20dB近いデップが生じています。

熱帯魚水槽で使う濾過フィルターを2枚重ねて吸音材に使用して測定

吸音材でアブソーブされたために共鳴による3rd@200Hzのピークは鈍くなってきてはいるが、まだ十分ではないようだ、この時 のインピーダンス特性は以下の通り。

下側のインピーダンスカーブの山のみ僅かに周波数下がって、その高さが低く潰れてきている、これは気柱のファンダメンタルな共振が50Hz付近にある為に 近い方の山により大きく制動が掛かって いるためと考えられる。

さらに多量に濾過フィルター吸音材を投入すると、開口部から放射される音圧は以下のような特性になった。

高域の漏れは綺麗に減衰しているが、50Hz付近にあったファンダメンタル共振の山が消失してしまっている。 過剰に入れすぎたようだ。

吸音材を軽く詰めた状態での開口部近接音圧特性

この状態で、仮にユニットのFsが低かったらどうなるのかを知りたかったので、振動板に10円玉を貼り付けて測定してみると。

Moは増えたが、予想通り40Hz〜70Hzが盛り上がって望ましい方向に変化した、本当にこのユニットのFs仕様変更が呪わしい・・・

前出の写真と同じ状態でのポートから放出される音圧特性(サイン波Sweepで測定)

開口面積が小さいので、絶対的な音圧の量は別としても、特性的には下側のインピーダンスの山がある30Hz付近までキッチリとSPユニット裏側の音を放射 しているのが見て取れる。

3.2kHzでクロスさせる為LPFを掛けて距離1mで測定した特性

う〜ん、室内での測定なのでローエンドがよく見えないが、これにツイターを足すと・・・

一応、    10dB落ちのローエンドの周波数が40Hzとなってそれなりに聴ける音ではあるのだが、やはり60Hzまでしかフラットに伸びているとは言えない状態のため、ちゃんとし た低音が 入っているソースでは物足りな い、低域の下限をもう少し低いところまで伸ばしたいと感じた。 音道の細さ故による効率の低下はあるものの、チューニング自体は長さ依存でもっと低くできそうだという感触を得たのであった。


エンクロージャーの設計 ver. 2

前出のような理由から、20%ほど全長を引き伸ばし再設計してみた。テーパー最後の板を薄くするのが大変だったので、この部分だけ設計を変更した。 リム ジンのよう にほぼそのまま前後に引き伸ばした感じになっている、よって閉塞端と開口面積の比は約4:1のままである


Negative Tapered Transmission Line Enclosure Schematic (Version-0.2)

Version-0.2 吸音材なしの状態での開口音圧特性

想定通り20%ほどチューニング周波数が低くなっている。
 
吸音材なしの状態でのインピーダンス特性

大きくなったぶん箱の強度が低いのか?密閉度が悪いのか? 電気的インピーダンス測定ではインピーダンスの山の周波数は計算通りには低くなっていないよう だ。 もっとも最初のバージョン1が接着せずにクランプとベルトで締め上げただけの状態なのでどれが正確な原因かは判らない。

実際に製作したエンクロージャーの画像 (ver. 2)

この画像では吸音材のサーモウールに加え、3th定常波の腹(全長の1/3付近)となる位置に局所的にニードルフェルトを追加して いる。

1mの距離でOmniMicで測定したウーファー側の特性 (Crossover LPF Frequency = 3.2kHz)
(以下、塩 沢@町田さんのオフ会blogページの添 付資料より引用)

フローリング音楽室内で測定した特性です、多少床面の反射による影響があります。低域は10dB落ちのポイントで45Hz〜といったところでしょうか。

開口部音圧(赤) と SPユニット軸上近接の音圧特性

開口面積が不足気味なのと吸音材のチューニングがイマイチのためローエンドの伸張効果がどうもハッキリしませんが、近接なので差が強調されていますが 35Hzから下の大陸棚的な部分が開口からクロストークしている音かも・・・。 距離1mでの測定でも同様の傾向が見られ、SPユニット前面からと思われ る領域と比較すると14dB近くも違うので少々差が大きすぎますね、 やはりエンクロージャーの幅、つまり開口面積の不足か、SPユニットのFsからかけ離れたチューニングの何もが効率低下の原因でしょうか?

この時のND105の電気的インピーダンス(実線)と位相特性 (FRAplusで 計測)

電気的インピーダンス特性の二つの山の間の42Hz付近で位相が0度なので、ここがファンダメンタルなλ/4共振周波のようです。

SPユニット近接のウエーブレット解析の結果

60Hz付近の強度分布を見ると、やや右下がりに見えますが、これはユニット背面からの圧力が1.5mの音道を通って開口部から放射されるまでの時間遅れ であると思われます。またバスレフ型と違い、強くアブソーブされているために低域のトランジェントのたち下がりが早いのが特徴的です。4mS辺りからの 300Hz〜2kHzにある三角形のレスポンスは、測定環境かSPシステム自体に何からの反射の類の問題がありそうな事を暗示しています。
う〜ん、こんなに色々と解析できるのを目の当たりにしてしまうと、Omni-Micが 欲しくなってきた(笑)

当初から、細い音道のために、SPユニット裏側から放射された音圧が相当にロスってしまう事は想定していたけれど、最大の関心事は、開口からの音圧がメイ ンとなる周波数領域で振動板にはどの程度の制動がかかっているのかという事で、仮に無制動状態で「暖簾に腕押しに」フラフラならすぐに振動板がボトムして しまうので50Hz以下の低い周波数まで音圧を出す事は出来なくなるが、能率は低いもののちゃんと空気を動かして鳴ってるのであれば置き方を工夫したり電 気的に補正するとかのやり方も実はアリなのではないかと考えており、そのためにも今回は最初からマルチアンプによるアクティブなクロスオーバーを使用して 実験を進めてきた。 実際にポートからの放射される音圧特性を見る限りは、効率こそ低いものの30Hz付近まで十分に空気を動かせる状態にあるようだ。 8cmの小口径SPユニットでここまで低い音を出せる方式はそう多くないと思うので、なんとかまとめ上げたいと思っている。 その前に、箱のチューニング に対してSPのFsが高すぎるのでユニットの入れ替えを検討している、次なる候補としてはDayton AudioのSpeciality Driverシリーズ CF120−4の 個人輸入を考えている、Qmsが低いのでパーシャルな共振モードでの音圧への影響が気になるが、ND105とほぼ同サイズでFsが53.2Hzと低く、 Qtsは0.28、素材も造りも良さげなので いま非常に気になっている存在である。


SPユニット取り付け位置による特性の違いについて

 近くCF120−4が日本のショップでも販売されるとの情報を得たので、それまでに出来る検討事項として残っていたSPのオフセット取り付 け位置による違いについて実験してみた。 実測してみたのは以下の3箇所で、それぞれλ/4基本波の節、5次共振の腹、3次共振の腹付近で ある。SPユニットを裏返しにして外側からドライブするという方法で取り付け、ユニットを移動した際に開けた穴は外側に当て板をして塞いだだけなので、完 全に理想的な条件ではないが十分にオフセットによる傾向は解ったような気がする。 以下の測定ではPeerlessの830985を12mmのバッフルに 取り付けエンクロージャーに開けた穴に外側からネジ留めで固定し開口から放出される音圧の周波数特性を測定した、残念ながらドライブする音量を一定にしな かったので音圧の絶対値は無視してほしい、吸音材は軽く入れた状態で一定にしている。



配置は下図A〜Cの1箇所だけSPユニットをマウントし、他の穴は合板で塞いて測定した。




位置A [閉塞端から約5cmのところにユニットを取り付けた場合]

吸音材が少なめなので150Hz付近には3rd、250Hz付近には5thという具合に奇数次の高次共鳴が起きているポイントでピークが薄っすらと見え る。

位置B [閉塞端から約20%オフセットした位置にユニットを取り付けた場合]

明らかに5thのポイント(250Hz付近)にデッドポイントが出来ているのが判る。

位置C [閉塞端から約35%ほどオフセットした位置にユニットを取り付けた場合]

1/3よりも少し中央寄りなためか、やや低い方にズレて100Hz付近にデッドポイントが出来ているようにも見えるが、それにも増して顕著なのが 40Hz〜60Hz付 近のパーシャル共鳴でのレスポンスの低下である。 後になって考えてみればすぐに解る事だが、オフセットの量が増えるという事は、パーシャル なλ/4共鳴にとっては駆動するポイントがどんどん波動の腹に近づいていく訳で、確かにSPユニットをオフセットして取り付ける事で高次共鳴 を抑えられるデッドポイントに置く事が出来るメリットがあるが、同時にλ/4共鳴の振幅も小さくなってしまうという実にシンプルな理由に今 頃気がついたの であっ た。

 以上の結果から考察するに、吸音材を詰めると特性がブロードになる故に3rdの共鳴デッドポイントをピンポイントで狙うのは難しそうである事。 5th の共鳴を抑える 効果を狙ったオフセット取り付けはパーシャルでのλ/4共鳴による音圧が十分であればアリなのかもしれないが、今回のエンクロージャーのよ うな明らかに細すぎる音道でロスが大きい場合にはλ/4共鳴の音圧を稼ぐことを最優先し、閉塞端付近にSPユニットを取り付ける方が楽に低 域再生の拡充が図れ、全体としてまとめやすいのではないか?という感じがしてきた。

 そこで、閉塞端寄りの位置Aに比較検討用の5cmユニットに代えて8cmのND105-4を取り付けて測定してみた。
音道の閉塞端がほぼSPユニットで塞がれたような状態に近いが、この時の開口部から放出されている音圧の特性は、次の通りでパーシャル共振での音圧が 増えている、またロールオフはしているもののポートから出る音の帯域はかなりブロードで広い。位相特性を測定していないのでユニット全面からの音との干渉が懸念されるが、 この点はサブウーハー専用ユニットに交換でもしない限りは吸音材の詰め方で改善する位しか方法がなさそうだ。

位置A [閉塞端から約5cmのところにND105-4を取り付けた場合の開口音圧特性]


[同上のSP前面で約50cm音圧特性] (sin波スイープによる測定結果、リニア目盛)

なんと、まるでEQでBassブーストしたかのような特性となった、ただし160Hz付近に位相回転による干渉が絡む何らかの打ち消しが起きているよう だ。
ともかく音バランスは改善されるのは嬉しいけど、現状では配置的にポート開口部がエンクロージャーの天板にきてしまうのでSPユニットから離れたところに ポート開口部を付けたくない私としては、箱の設計から新規に見直す必要に迫られた・・・・

こうなると欲が出てしまった勢いで天板に来 た音道をさらに30cmほど延長!

加えて閉塞端から音道全体の約2/3まで吸音材を追加してみたところ、ポートから放射される音圧は以下の ような特性になった。

[延長したTLポートから放射される音圧の特性]

口径8cmのユニットにしては、異例な位に低い周波数まで出るようになった。中域の漏れ音圧も下がり振動板前面の音とポートからの放射が干渉する事 も減ってスッキリした印象の音になってきたので、等距離に両者を合わせた近接レスポンスを測ってみた。

[Woofer前面約50cmでの音圧特性] (sin波スイープによる測定結果、リニア目盛)

吸音材を追加したせいか? 160Hz付近にあったデップは無くなったようだ。 業務用モニターSPとかなら話は別だけど、家庭用の小型SPシステムとしてはこういう特性ならラウド ネス要らず?で実用的 にはこれはこれでアリかもしれない、測定中のスイープ音を聞いていると、スタンディングでも何とか30Hz付近まで一応音として聞き取れる。

ウーハーの前面50cmでポートと合わせたレスポンスを測ってみた。

50Hzのスペクトルはグランドループによる 測定系のハムノイズなので無視してほしい、総合的に見て調整次第で±6dB程度のリップルを許容するなら下は40Hzぐらいから何 とかイケそうな予感がしてきた。


【改造失敗】
60Hz〜80Hzにある盛り上がりをもう少し低い周波数に持ってこようと色気を出して、エンクロージャーに以下のような増築をしてみた。延長した音道の 高さを1mm低くして15mmにしてみた、全長は約180cmとなる。


インピーダンス特性は低い方の山が僅かに認められる程度に低く約20Hzに低い方のピークがある。


これなら盛り上がりの周波数が低い方へ平行移動しているだろうと甘い期待を抱いたら、チューニングを下げすぎたようで、思っ切り100Hz以下のレスポン スが下がってしまった。

QWTのチューニング周波数が下がりすぎたのと、開口の断面積が減ったダブルパンチが原因ではないかと思われる。

伝達関数解析で位相を読めるようにしたので、スピーカー前面と開口からの音圧と位相を比較解析してみた。
まずSP前面近接で約3cmでの特性

スピーカー振動板前面からは、100Hz以下は大して音量が出ていないのが判る。

これに対してQWT開口からの輻射音の特性(音道の開口付近)

ポートからは20Hz近くまで出てるようだ、元を正せばスピーカー裏側の音なので逆相だったはずだが、QWTで一応位相が反転しいるので、多少ズレはある が80Hz付近ではスピーカー前面の音と同相になっているから、レベルさえ稼げれば両者は強め合うはずである・・・ 音圧を稼ごうと吸音材を減らしたので 300Hz付近の減衰量が減ってしまっている。


エンクロージャーの設計 ver. 3

Designing ver1.0 NTQWT Enclosure

アライメント見直し追試の結果に気をよくして早速新しいデザインを考えてみた。
 設計上のポイントは、音道の長さは1.8mと長く取りSPユニットを閉塞端近くに取り付ける事で高次共鳴を抑えるよりもパーシャル共振の振幅を優先す る。開口部と振動板を同じ面に持ってくる、横幅はそのままスリムで薄型のプロフィールを維持するというもの。

[NTQWT ver1.0 Design Schematic]

 NTQWT_ver1.0 Schematic PDF

開口部を振動板と同じ面に持ってくるためと、SPユニット裏側のスペースを十分に確保するために音道の閉塞端を折り曲げ、そのコーナーにSPユニットを配 置する 構造とした、ツイターとの位置関係を逆にした方が開口からの音圧が高くなると予測されるが、多少はオフセットした方が100Hz〜200Hz範囲の落ち込 み量を少なくできそうな感じがしたのでとりあえずこれで作ってみて、ダメだったら2枚重ねにしたバッフル板の外側の板を交換する事で対処するというプラン Bを用意してある(笑)
今回は最終的な細部にまでデザインをした完成形を目指している、例えば開口部をフレアーにして風切音を低減する工夫とか、フロントバッフルの端をラウンド させて回折の影響を低減するとか、ツイターを沈めてバッフルステップ効果による特性のうねりを低減するとかの細かいけど有効な事は一応盛り込んだつもり だ、吸音材の詰め方もこれまでの経験から3次と5次の共振を抑えるポイントを強化、SP裏側至近の反射による定在波の影響を低減する対策も考慮してある が、 果たして実際の完成度はどうなるのやら・・・

予算と時間が取れてユニットが手に入り次第に制作予定

以下、工事中




要注意ポイントのまとめ

  • Fsが十分に低く(60Hz以下)、Mmsが大きく、Qtsが低い適切なSPユニットを選ぶ必要がある(ファ ン ダメンタル共振以下の周波数では24dB/octでバッサリと切れて出なくなってしまうのでなるべくFsの低いものを選ばなくてならない)
  • 本来のTLの音を聴きたいのであればSPユニットのFsと1/4波長菅の共振周波数を合わせる必要がある(インピーダ ンスカーブの山での共振を制動して潰せる)
  • 吸音材を入れる場所と、その量次第でポートから放射される音圧、特に3rd,5thでの音圧特性は大きく変化する (軽 く± 数dB変化する)
  • 高次共鳴や高域の漏れが多いと聴感的に濁った感じの音になってしまうので周波数特性ばかりでなく吸音材の不足に よる時間軸方向に尾を引くような音質の悪影響にも注意
  • 一般的には3rdと5thの菅共振によるピークが耳につかない程度の量の吸音材を入れれば実用的には十分満足できるも のと思われる。
  • 開口端寄りには可能な限り吸音材を入れない(極端に放射される音圧が低下してしまう割に高次共振ポイントでの音圧が下 がらない)
  • 小口径ユニットで作るときは、低域のゲインを稼ぐ事を優先してSPユニットを閉塞端付近に配置するほうが良い
  • トランジェント的な音質的特徴として、TLは原理上どうしても振動板背面からの圧力変化がリップまで達して外部に音圧 として放射されるまでの時間がかかるので、小口径SPの場合に極めてタイトなキック音やチョッパーベースのアタック部分で基 音が十分聴こえず正確なバランスにならない特徴がある。
  • 上項の特徴はパイプオルガンの低音や緩いバスドラム音では気にならない事も多いが、オールマイティに聴けるようにする には低音楽器の基音部分(概ね40Hz程度まで)をSPユニット前面からの音圧でカバーできるサイズのユニットで作れば上記 の短所が問題と感じられなくなる。



Designing Enclosure Tips:

【設計上の留意点】
使用するユニットを選定した段階で、チューニングでは超られない限界があるので慎重 にユニット選びをする必要があります。 ユニットのFoに合わせて全長を決めたら、無理のない範囲でSdから音道開口部の断面積を決め、閉塞端からのSPユ ニットをオフセットする取付位置を決めたらば、ストレートなり折り 曲げなりの方法で全体のレイアウトを考え、最終的なポートの出しかたを考えるという手順で 良いのではないと思います。 効率的に放射される音圧を利用するためには開口の断面積を十分に確保する必要があります。 SPユニットをオフセットさせる位置 は3次共鳴を抑えるのがいいのか?5次次共鳴を抑えるのがいいのか?、もしくはその中間で程々がいいのか等まだまだ興味は尽きない。



Building and Tuning the Enclosure Tips:

【製作とチューニングについて】
制作する上で定常波の節となる位置は特にガッチリ強度を確保し、エンクロージャーの変形により音 圧がロスるのを防い でください、そして何よりも重要な吸音材の詰め方は、多分にカット&トライ的な要素を含みますので、インピーダンス特性とポートから放射される音圧の特性を常に確認しつつ 追い込んで行けば、多少はなりと収束する方向にたどり着けるものと思います。 吸音材が全く足りてない状態ではポートから放射される音圧に奇数次の共鳴が 目立つので判りますし、吸音材が少なめの範囲でインピーダンスカーブの山が二つ観測されます。さらに吸音材を増やしていくとインピーダンスカーブの山はどんど ん低くなっていき、最終的にはフリーエアでのFsと大差ない周波数で低い山一個だけになります。 この状態を超えてギュウギュウ詰めにしてしまうと流石に抵抗 が増えてパーシャル周波数での音圧も大きく下がってきてしまうので、程々に高次の共鳴が抑えられた状態から詰め過ぎになる手前までの間が「いい加減」となるポ イントよう です。 経験上言えそうな事は、吸音材は全体に一様に詰めるのではなく、閉塞端側よりに多く入れて、 開口端には極力入れない、局所的に定在波の腹を狙って入れる と確かに効く、MJK氏の文献を読むとテーパー比5倍の場合ベロシティ最大となる3rd共 振ポイントは全長の42%付近、5th共 振は全長の25%付近のようなので、このような波動の腹付近には重点的に吸音材を入れたり、そこだけ素材を変えてみる意味はありそうです、また 重い素材の方が定在波をよく吸収するものの通り抜けていく際の抵抗も大きく音圧がロスりやすいので入れると狭くなって音道を塞いでしまうような箇所には使わない、そういう 場所では薄くして板面に貼るといった柔軟な使いこなしが吸音材を入れる上でのポイントのようです。



(参考にしたリンク)



[この資料の利用上の注意事項]
 本ページはHILOが個人的趣味で記載したものであり、内容一切を保証するものではありません。   従って本資料に基づき不具合が発生したり、万一事故が生じたとしても、当方は一切関知しないものであります。 従って、情報の利用はあくまでも各自、個人の責任おいて行ってください。

→メインページ(Return to Main-Page)

inserted by FC2 system