中華HIDキットの巻


HID KIT TEAR-DOWN



事の始まり:
近所のUp-Garageで散歩の途中でフラッと立ち寄ったらH7のHID-Kitが新品で安く売ってたのでフラッと購入してしまいました、そして御多分に洩れず、中華クオリティを堪能するハメに・・・

キット内容: 

 
同じものが2セット入ってました。
バラストに書いてある仕様は以下の通り

エンジニアの性で無意識に電源のVAを計算してしまう習性からPinput = 13.2V * 4.2A = 55.4W
あれっ?出力55Wなら効率99.3%と夢のように超素晴らしい製品なのではないか・・・
もう、この時点で怪しさ満点ですね


H7ハロゲンバルブとHIDバーナーの比較


発光する位置はハロゲン球のフィラメントの位置と同じなので、交換後も光軸はほとんど変わらないものと思われます。


車両の右目がHIDで左目がハロゲン球、色温度の違いがよく分かるが、色味が緑がかっていてパッケージに書いてある6000ケルビンの白色には見えない、さらに時々ちらついて輝度が上下に変化する、どうもバラストの安定度が怪しい、バーナーも怪しいので外して見てみると・・・

左が後で購入したCT製と思われる(アマゾンではフィリップスチップ?とか訳わからないことを言って売ってるパチ物)使用前、右がkitに付属していたバーナー、発光部が白濁している、店頭では新品と書いてあったんだけどね・・・・。 しかし、結局バーナーを交換してもちらつきは無くならないので、怪しいバラストにメスを入れる事に・・・ (バーナーの交換で色味は多少改善されました)
修理に出しても治る訳もない中華製品の「仕様」なので躊躇なく開けてしまいます。

絶縁紙を剥がすと、一応防水しようと努力した跡が・・・・

これじゃ水漏れしますわな、この辺りの詰めの甘さが中華クオリティですね。

反対側は・・・

こっちは完全に封止できてますね。 

このままでは何がどうなのかさっぱり見えないのでコーティングを剥がします。

子供の教材に「化石発掘体験キット」というのがありましたが、あれに近い感じですな・・・・
高圧部分は見当がつくので温存して、基板が見える状態になりました。

Top View (比較しやすくするために上下反転しています)

Bottom View
 ざっと解説すると、右上のコネクターから供給されたDC12VはQ1でメインスイッチされ中央上にあるTO-220の石でPWMスイッチング動作、黄色いトランスで昇圧して整流、一応R17〜R19の電圧フィードバック系とR20〜R22の電流フィードバック系があるようだが、定数をいじってみたが出力に変化がなかったので、実質的にリミッターのようだ。 つまりバーナー電力の制御はバーナー放電電流と電圧の積ではなくR8〜R10を流れる電流を監視しながら制御する動作をしていた。
そしてバイク用は別として通常のクルマ用HIDならあるべき昇圧・整流された高圧電源から交流の矩形波を作るフルブリッジ回路が無い! そう、このバラストは直流点燈だったのだ〜、交流点灯に必要な回路を省いて直流でも一応点燈はするが、輝度そのものが低かったり輝度が不安定になったりするし、何よりも問題なのはDC点燈専用のバーナーを使わない限りは電極が片減りしてしまうため、寿命が1/4ほどに短くなってしまう信頼性の低さと、このコストダウンの代償は決して小さくはない。

インバータートランスの入出力波形
波形のオレンジが一次側、青が2次側、スイッチング周波数は30kHz近傍のようだ。 
これを整流したものがバーナーの点燈用電源となる、HIDは点燈始めには2万3千ボルトもの高電圧を掛けるので機材を繋いだまま起動すると一発で昇天してしまう、もちろん人間が触ろうものなら人間も昇天してしまう程危険なので絶対に生半可な知識でイジるべきで無いと警告しておく、点燈を持続する状態になると85V程度で放電するようになる、この辺りの動作は蛍光灯と似ている、こうなればテスターで電圧を測って交流か直流なのかを知ることもできる。

交流点燈なら300〜400Hz程度の矩形波のはずだが、残念なことに私が購入したバラストの出力波形は以下のような直流というか脈流であった・・・・
画像下側のスペクトラム表示を見ると判るように直流(脈流)点灯ゆえにEMC輻射量は少なめである。 平均すれば80Vほどの電圧であるが、リップルの谷では60V近くまで電圧が下がってしまっている、これでは放電が停止してチラついてしまう可能性が高いのではなかろうか? 平滑コンデンサーの容量をアップしてより直流に近づければ輝度の安定度はどう変わるのか?技術的興味はあるが、実用性を考えたらさっさと交流点燈のバラストに買い換えるべきであるという結論に達した。

画像左側に子基板が立っているが、ここだけ両面基板でメインは片面基板にしてコストを下げるという涙ぐましい努力は中華製品では常套手段である、この子基板にPWM制御をする定番のチップTI製のTL494が載っている。
このICのpin1とPin2ではインバータートランスの駆動電流をR8〜R10の両端で検出した電圧としてモニタし、これをリファレンス電圧と比較して出力が一定になるように制御しているのだが、上の画像ですぐ左にある半固定抵抗で簡単に出力パワーが変更できる回路だったので、ラベルの表示通りにDC13.2Vで4.2A流れるように調整をやり直しておいた、この時のバーナー端で測定した出力は46.7Wで変換効率は84%とフルブリッジ回路がない分だけ変換効率は良かった。

ちなみに改造前は点灯時にバーナーが消費している電力を測定したらピッタリ35Wであった、つまり改造前は35Wバーナー用のバラスト、改造後はラベル表示通りのバラストの(出力が55Wではなく)入力側の消費電力が55Wのバラストという中途半端なものになった。 全くもって表示はアテにならない激安中華製品のクオリティをあらためて思い知ったのであった・・・・



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