S11 Measurement Adapter for Analog Discovery



Analog Discovery2用 S11インピーダンス測定アダプタの製作

Introduction:

近年、自宅のデスクトップ環境も充実してきて昔では考えられなかったような事が結構安価に実現 できるようになってきた。その中でも計測器の類は様変わりで、かつてテスターと工具から始まった機材も、自作の発振機と中古オシロを入手できた事で相当な充実 感が得られていた。 しかしさらに時代は変わり「パソコン」という武器を得て大きな変貌を遂げる事になった。 設計段階での回路シミュレーターによる事前のシ ミュレーション、部品の配置は画面上のEDAソフトで、予算が許せばそのまま基板を発注して、ネット通販で部品を発注、出来上がった基板の性能測定にはUSB オーディ オインタフェースが大活躍という状況となり、ミリバルや歪率計なんてもう要らないねと変わった。さらにマイコンの開発や、ロジック系のCPLDや FPGA設計もパソコン上で可能となり、ますますPCなしには殆ど何もできない状況となったので。 思い切って、この際自宅書斎を「Myラボ」と位置付けて開 発環境の充実を図って行きたいと考えるようになった。 現在、私のラボのメイン機材といえば以下のようなものだけど、あとはアイディアと工夫で何とかするしか ないのも現実である・・・
最後の二つは中古計測器なので使えるのは当然なので別として、特に最初の2つは趣味の範囲でMyラボの機材として持ってても十分に使えるものとして推奨し ます。
随分と前振りが長くなってしまったが、今回のテーマであるAnalog Discoveryについて簡単に説明すると、100MHz,14bitサンプリングの2chA/D変換、2ch任意アナログ波形発生器、16chパラレルロジック信号入 出力インタフェース、小容量プログラマブル±電源 これらが小ささなケースに集約されたUSBデバイスで、これをPCに接続することで実験ベン チでやりたい事のかなりの部分が賄える。 これまでFFTアナライザー用のA/D変換器としてUSBオーディオを、その広いダイナミックレンジを活かして愛用 してきたが、近年のハイレゾ化対応を考えた場合、もっと高い周波数域の特性を見たくなった、例えば50kHz〜100kHzオーバーのLPFの切れ具合である とか、オーディオ出力に可聴帯域外のノイズもれが出てきてないか?、広帯域アンプが位相余裕がなく不安定で発振しそうではないか?、スイッチング電源のノイズ 分布はどうなっているのか? 等のやや高度なニーズにも答えてくれるのが、このAnalog Discoveryなのである。

Concept:

スペアナの機能についてはAnalog Discoveryの標準ソフトであるWaveForms2015で十分間に合うのであるが、目玉機能であるネッワークアナライザー機能、と言ってもWireSharkの ような通信パケット解析じゃなくて、アナログ信号系をネットワークと捉えての特性解析機能のことで、専用の計測器は数百万円もするものである。 この機能を もっと活用 したいと考えた。 ちなみに、WaveForms2015標準のネットワーク解析機能では各周波数における振幅(Gain)と位相(Phase)が測れる。 Analog Discoveryで標準対応しているのはS21(透過係数)と呼ばれるもので、下の画像のようなスタイルのでの測定だけで ある、つまり入力と出力を持つパイプ的な構成のD.U.T.(測定対象)で、これを計測システムに繋いで、測定信号を行って来いさせないと測れないという制約がある。



つまりチョークとかコンデンサーとかコイルとかの部品単品の特性をAnalog Discovery標準機能のままでは知ることができない。 例えばスピーカーのインピーダンス特性を知りたいとか、このコンデンサーの高周波特性を知りたいとかであれ ば、既知の抵抗を一本用意し、以下のような接続で測定したデータをエクスポートしてからExcelとかの表計算ソフトに読み込ませることでインピーダンス特性 を計算することは可能ではあるが、一手間かかる故にリアルタイムに特性の変化を観察したりすることはできないのである。


Feb.14,2014追記:
miyaさん開発 のFRAplus というソフトがこのスタイルの測定に対応したようです。(必要な部品がRs抵抗だけなので表計算ソフトなしで1MHzまでのインピーダン ス測定がカンタンにできます、その他にも校正機能つきのf特や歪率測定など盛りだくさんのソフトです)

Jul.19.2019 追記:
Digilent 製の純正ソフトが旧名の"Waveforms2015"から"WaveForms" と名前を変えたのに伴いこの方式のImpedance Analyzer機能が標準搭載となりました、Rs 抵抗の自動切り替えに対応した専用のadapter基板も発売されました。さらに起動時に"SoundCard"という名前のデバイスを 選ぶことで、汎用のUSBオーディオI/Fを利用できるようになり、一部の機能はAnalogDiscoveryを持っていなくとも使えるため、誰で も14bitを超えるオーディオ特性の測定が可能となりました、特にS21測定での歪み特性の測定や残留ノイズのSpectum解析では24bitの USB Audio I/Fの利用は非常に有用だと思います。使用できるオーディオインタフェースはASIOドライバーに対応している必要があります、対応していない機器でもASIO4ALL ドライバーを使用することで使える可能性があります。

[追記1]
WaveForms2015でもネットワークアナライザのカスタム機能を使って 以下の ような接続で測定すれば、演算処理で直読測定が可能な事がわかりました。
(WaveForms2015のマニュアルより)


[追記2]
S2-1測定には違いないが、上記の何とも違う方法もあります、電流→電圧コンバー ターを使用し インピーダンスZは(電 圧÷電流)から計算する方法です。

I-V変換の反転入力端子は仮想接地点なのでほぼ電圧ゼロ、よってDUT両端にかかる電圧V1はC1に等しくなる。 一方、DUTに流れる電流 i はRfbに流れる電流と逆向きで同じ大きさとなり両者が打ち消しあってバランスすることで平衡を保つ、よって I-Vコンバーターの出力電圧V2は V2 = -(i × Rfb)となる、これを変形して i = -(V2 ÷ Rfb)で計算できるので、求めるインピーダンスZは C2の正負を逆に接続することにより
Z = V1 ÷ (V2 ÷ Rfb) = (V1 × Rfb)÷ V2 で計算できるはずだ。

このように様々な測定方法を挙げてきましたが、残念ながらAnalog DiscoveryとWaveForms2015だけの組み合わせだと下に示すようなS11と呼ばれるスタイルの測定に は対応できない


では具体的に、このS11スタイルの計測ができないと何が不便なのかというと、アンテナのように先端が解放されてどこかに行ってしまい戻ってこないものや、自 作した電源の高周波域での信号源インピーダンス特性を知りたいとか、電源に入 れてる パスコンの効き具合をリアルタイムで確認しながら検討したいとかいうようなケースでは、実装状態でかつリアルタイムでその特性変化を把握できないことには非常に効率が悪 い。市販の定電圧電源回モジュールなどでは勝手にどこかをカットして信号を注入するという訳にもいかないし、安定化電源などは電源を入れない状態で測ってもデ カップリングのコンデンサーやチョークなどのパッシブ部品が本来の機能をしないうえにFeedBack動作してないので全くもってな んの意味 もないし、部品を変える度に計算のため作業を中断したくもないし特に微妙な変化となれば尚更である。そこで、これから解説する拡張アダプタを自作することで 積層セラミックコンデンサーなどのMHz帯に極がある部品のチェックなどにも Analog Discoveryが絶大な効力を発するS11タイプの計測器に化けるのである。

 抵抗を直列に挿入したS21接続によるインピーダンス測定法と決定的に違うのは、被測定物を 完全に定電流駆動で測定するため流れる電流の強弱で特性が変化してしまうもの、例えばスピーカーの共振周波数とインピーダンス特性やコア入りのインダクターな どの実特性を正確に測定できることと、±5Vの低い電源電圧ながら比較的大きな電流で測定することが可能な点である。 電圧源に抵抗を直列に接続した測定の場 合は一般に負荷の変動による電流の変化を嫌って定電流状態に近づけるために抵抗Rsの値は高めにしなくてはならないので高出力電圧のアンプ等が必要とされる が、ここで紹介している回路ではゲインが1倍なのでうまく動作しないがAD8397ARDZ等のような大出力電流オペアンプを使用する回路にすれば AnalogDiscovery2にACアダプタ(+5V)を接続 するだけで100mAもの駆動電流を流した測定が実に容易に測定可能になる。 そこまで特殊なオペアンプを使わなくとも逆にWG1の出力を絞ることでDUTに流す電流を小さくして測定することもできる、測定は相対的なゲインの測定によって行われるた め負荷の特性に変化がなければ測定する電流が変わっても測定値は変わら ずに直読できるるので駆動する強度によって特性が変化するような測定対象の測定にも適用できる点がこの方式の一番の特徴といえよう。

以下製作編へと続く・・・


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